「ひふみ投信」や証券会社で購入できるバージョンである「ひふみプラス」が日本の投信として一時代を築いたことは疑いの余地はありません。
実際、運用開始からみると日経平均を大きくアウトーパフォームしており素晴らしい成績を残しています。
青:ひふみ投信
赤:日経平均
しかし、直近の成績をみると景色がだいぶ変わってきます。2018年以降は残念ながら日経平均すら下回る成績となってしまっています。
青:ひふみ投信
赤:日経平均
明らかに成績としては2017年末から不調に陥っています。
今回は「ひふみ投信」がどのようなファンドか振り返った後に不調に陥っている原因について紐解きながら、昔の「ひふみ投信」のような投資を行うファンドについてもお伝えしていきたいと思います。
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「ひふみ投信」の特徴
まずは「ひふみ投信」の特徴について振り返っていきたいと思います。
運用は独立系の運用会社である「レオスキャピタルワークス」が担う
基本的に投資信託と呼ばれる金融商品は野村證券アセットマネジメントや日興アセットマネジメントのように金融機関のグループ会社が行なっています。
しかし、「ひふみ投信」の運用を担うレオスキャピタルは金融機関の関係会社ではない独立系の運用会社となっています。
社名 | レオス・キャピタルワークス株式会社 Rheos Capital Works Inc. |
設立年 | 2003年4月16日 |
本社所在地 | 〒100-6227 東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス(PCP)丸の内27F |
資本金 | 100百万円 |
代表取締役社長 代表取締役副社長 |
藤野英人 湯浅 光裕 |
事業内容 | 投資運用業 投資助言・代理業 第二種金融商品取引業 |
経営理念 | 「資本市場を通じて社会に貢献します」 |
よって、「ひふみ投信」は独立系の投資信託とも呼ばれています。
ファンドマネージャーは中小型成長株投資に強い藤野英人氏
藤野英人氏は野村アセットマネジメント、JPモルガン・アセット・マネジメント、ゴールドマンサックスアセットマネジメントを経験して2003年にレオスキャピタルワークスを創業。大学卒業後一貫して金融畑を歩んできています。
主な経歴は中小型の成長株投資。この得意な投資手法が今回の記事で重要な要素となってきます
投資啓蒙活動も積極的に行っており、以下の本を執筆しています。
- 投資レジェンドが教えるヤバイ会社
- 投資バカの思考法
- 投資家がお金とり大切にしていること
- 儲かる会社、潰れる会社の法則
- 日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい
最後の本は現在日経平均に負けた成績なので、ちょっと滑稽になってしまいますが・・・
また、公的な活動としては以下があります。
- JPXアカデミーフェロー
- 東京理科大学上席特任教授
- 早稲田大学政治経済学部非常勤講師
- 一般社団法人投資信託協会理事
「ひふみプラス」「ひふみ年金」「ひふみらいと」「ひふみワールド」とは?
ひふみ投信はシリーズとして3つの「ひふみ」が用意されています。
ひふみプラス | 証券会社で購入することができる「ひふみ投信」。マザーファンドが同じであるため、リターンも「ひふみ投信」と同じ。 |
ひふみ年金 | 確定拠出年金向けに組成された。マザーファンドが同じであるため、リターンも「ひふみ投信」と同じ。 |
ひふみらいと | 株式10%に対して債券90%で運用されている安全重視型のファンド。投資対象は世界の株式と債券。レオスキャピタルワークスの直販。 |
ひふみワールド | 世界の株式に分散投資をするファンド。レオスキャピタルワークスの直販。 |
その他にも最近「まるごとひふみシリーズ」というものを販売しています。このシリーズは証券会社で購入可能です。
まるごとひふみ15 | ひふみ投信マザーファンド 9% ひふみワールドのマザーファンド6% ひふみグローバル債券マザーファンド85% |
まるごとひふみ50 | ひふみ投信マザーファンド 30% ひふみワールドのマザーファンド20% ひふみグローバル債券マザーファンド50% |
まるごとひふみ100 | ひふみ投信マザーファンド 60% ひふみワールドのマザーファンド40% |
まるごとひふみシリーズはまとめると以下のようになります。
【本題】ひふみ投信が不調に陥っている原因とは?
では本題に移っていきたいと思います。
主因は藤野英人氏の「カンブリア宮殿」出演後の純資産の急騰
当時圧倒的なリターンで注目を集めていた藤野英人氏は2017年2月16日にカンブリア宮殿に出演しました。
番組の題は「間違いだらけの"日本の投資"に変革を― 成長企業を見抜くカリスマが明かす投資術!」でした。
衰退してきているとはいえ、特に高齢者を中心にまだまだテレビは存在感があります。
更に日本の資産の大部分を占めるのは高齢者です。彼らがテレビをみて「ひふみ投信」に殺到しました。
結果的に以下のように純資産が急騰しました。
丁度運用成績が悪くなったのは2017年の後半に入ってからで、時期がピタリと重なります。
では、なぜ運用資産残高が増加することでリターンが悪くなったのでしょうか?
次の項目で詳しく解説していきます。
得意な中小型成長株投資ができなくなった
ファンドマネージャーの藤野英人氏の経歴の項目でお伝えしたとおり彼が得意とするのは中小型成長株投資です。
運用開始から最も調子のよかった頃の「ひふみ投信」は中小型成長株投資で大きなリターンをあげていました。
しかし、2017年末以降明らかに超小型並びに中小型株の比率が減少し大型株の比率が急激に上昇しています。
※時価総額300億円未満を超小型株、時価総額300億円~3,000億円未満を中小型株、時価総額3,000億円以上を大型株と定義。
この推移をみていると殆どリターンをだしていたのは超小型株であることが推察されます。
日本は上場している銘柄数が異常におおいので規模の小さい超小型株は時に市場から放置され、異常なレベルの割安水準で取引されていることがあります。
それらの銘柄をハントして最初のうちは大きなリターンをあげていたのでしょう。
しかし、申し込みが殺到したことで魅力的な超小型株だけで運用することが不可能となりました。
そこで2017年の後半から大型株の投資比率がぐんぐんと上昇しています、
2012年時点では40%近くを占めていた利益の源泉である超小型株はなりを潜め、現在では数%の比率でしか組み入れられていません。
いくら超小型株投資が巧みであったとしても組入比率数%では全体のリターンを引き上げることができないのです。
2022年4月末時点の組み入れ上位銘柄は以下の通りとなっています。
ソニーグループ(大型株) | 2.55% |
オリエンタルランド(大型株) | 2.44% |
東京海上ホールディング(大型株) | 1.94% |
三菱UFJフィナンシャルホールディングス(大型株) | 1.80% |
INPEX(大型株) | 1.72% |
NTT(大型株) | 1.66% |
マイクロソフト(海外大型株) | 1.66% |
住友貴金属(大型株) | 1.60% |
トヨタ自動車(大型株) | 1.56% |
三菱商事(大型株) | 1.37% |
合計 | 15.21% |
ちなみに2022年2月末現在の組入上位10銘柄は以下の通りとなっていました。
上位の構成銘柄はあまり大きな変化はありませんが、トヨタ自動車やデンソーやマイクロソフトのポジションを落としてソニーやオリエンタルランドを購入していることがわかります。
トヨタ自動車(大型株) | 2.63% |
デンソー(大型株) | 1.86% |
マイクロソフト(海外) | 1.63% |
東京海上ホールディング(大型株) | 1.59% |
東京エレクトロン(大型株) | 1.48% |
インターネットイニシアチブ(大型株) | 1.41% |
ミライト・ホールディングス(中小型株) | 1.29% |
ソニーグループ(大型株) | 1.17% |
INPEX(大型株) | 1.11% |
富士電機(大型株) | 1.04% |
合計 | 15.21% |
如何でしょうか?正直インターネットイニシアチブとミライトホールディングス以外は聞き馴染みの銘柄ばかりではないでしょうか?
最近は海外株も多く取り入れていますっがマイクロソフトは時価総額300兆円に迫る超巨大企業です。
殆ど上位銘柄は大型株で占められているのです。
構成銘柄が多すぎて日経平均株価と同様の動きになっている
投資の世界で「卵を一つの籠にもるな」と頻繁に謳われます。
卵を一つの籠にもってると落とすと全てが台無しになるので複数の籠に入れなさいということから転じて分散投資の必要性を説いています。
たしかに分散投資は重要ですが、分散させすぎると指数と変わらない動きとなってしまいます。
現在、ひふみ投信の組入銘柄数は276銘柄となっています。
日経平均は別名日経225といわれています。つまり225銘柄で構成された指数なのです。
つまり、ひふみ投信は日経平均よりも銘柄を分散させているファンドということになるのです。
ここまで分散させると指数に対する超過リターン(=アクティブリターン)を出すことは難しくなってきます。
実際、最初にもお伝えした通り殆ど日経平均と同様の値動きになってしまっています。劣後していますが・・・
青:ひふみ投信
赤:日経平均
既に「ひふみ投信」はアクティブリターンを目指すファンドとは言えなくなってきているのです。
ファンドの規模が大きくなると普遍的にこのような事象が発生する
ファンドの規模が大きくなったことでリターンが悪化したのはひふみ投信に限ったことではありません。
同じような運用スタイルで高いリターンを出し名声を高めたジェイリバイブも規模が大きくなってからリターンが悪化しています。
→ 【ブログ更新】過去に高いリターンで評判となったSBI中小型割安成長株ファンド(愛称:ジェイリバイブ)は投資妙味があるかを徹底評価!
運用開始以来でみるとジェイリバイブは「ひふみ投信」すら凌駕する成績を叩き出しています。
緑:ジェイリバイブ
青:ひふみ投信
赤:日経平均株価
ただ同じく2018年からのリターンでみると、違った景色となります。
ジェイリバイブは日経平均だけでなく、ひふみ投信にも劣後したリターンとなってしまっているのです。
このように超小型株と中小型株投資で名乗りを上げたファンドは最終的に運用資産額が増えて本来の運用ができなくなるという末路をたどる運命にあるのです。
好調だった頃の「ひふみ投信」に投資する方法とは?
「ひふみ投信」や「ジェイリバイブ」の例から分かる通り日本株の超小型株投資には妙味があります。
それは日本の上場企業数の多さに起因しています。日本には3500社以上の上場企業が存在しています。
一方、時価総額が7倍もある米国株式市場の上場企業数は5000社となっています。日本は時価総額の割に上場している会社が多いのです。
トヨタ自動車やソニーのような大型銘柄は証券会社のアナリストが分析するので理論価格と近いところで取引されます。
しかし、時価総額が300億円に満たないような超小型株ではアナリストの目が行き届きません。
また機関投資家も取引しないので明らかに適正な価格からかけ離れて割安に放置されている銘柄が存在するのです。
そのような銘柄を狙い撃ちすることでファンドとして高いリターンを期待することができます。
このような投資方針をメインとして行なっている、まだそこまで規模が大きくないファンドに投資することができれば、
栄光を手にしていた過去の「ひふみ投信」にタイムリープして投資をすることと同様の投資を行うことができるのです。
そのようなファンドとして筆者も実際に投資しているのがBMキャピタルです。
BMキャピタルはファンドの運用規模は100億円程度です。現在のひふみ投信が7000億円であることと比べるとだいぶ小さいですね。
ただ、2010年時点の「ひふみ投信」もまさに運用資産規模は100億円程度だったのです。
BMキャピタルは運用開始が2012年ですが開始から一貫して超小型株投資を実践しております。
実績も十分で過去10年間一度も下落することなく年率10%以上のリターンを叩き出しています。
日本株で利益をあげる王道ともいえる超小型株投資という王道を実践しつづけ結果を出し続けているファンドなのです。
公募投信であれば既に人気を博し数千億規模となっていますが、私募ファンドとして運用しているため規模としては100億円に抑えられています。
むしろ私募ファンド(=ヘッジファンド)で日本でここまでの規模になっているのは最大規模といえます。
以下でBMキャピタルについては詳しくお伝えしていますので参考にしてみてください。
まとめ
今回のポイントをまとめると以下となります。
- ひふみ投信は超小型株投資を中心に高いリターンを上げてきた
- カンブリア宮殿出演をきっかけに出資が殺到
- 結果、本来強みをもつ超小型株投資だけでは運用できなくなった
- 銘柄数も分散させすぎており指数と同じ動きになってしまっている
- 同じく中小型株投資で名を馳せたジェイリバイブも近年は同じ結果に
- 2000年代から2010年代前半の全盛期の「ひふみ投信」のようなファンドに投資するのが合理的
- 筆者が投資しているBMキャピタルはまさに2010年代前半の「ひふみ投信」を体現している