2020年から株価が上昇したことで、株式投資ブームが勃発しました。
筆者の地元でも株式投資を始めた友人が頻発しました。
しかし、2021年の後半から株式市場は世界的に軟調に推移しちえます。ブームで沸いていた雰囲気も一気に沈静化しています。
最近、筆者の周りでも株式投資(個別株)をやめた人が続出しています。
ただ、2019年に比べて、まだまだ株価は上の水準にいます。理論的には利益を得ている人のほうが多いはずです。
しかし、投資家の数は直近大幅に減少しています。
なぜなのでしょうか?
その理由を解くと共に、個別株を扱うことの難しさについて今一度焦点を当てていきたいと思います。
因みに、筆者自身は株式投資を始めてすでに9年になりますが、「何年経過しても個別株は難しい」という感想は変わりません。
個別株をやめた人続出はなぜ?
筆者の周りでも個別株をやめた人が最近続出していますし、SNSを見ていても株式投資に関する投稿は減少しているように思います。
今の時代はとても便利で、グーグルで検索されている数の推移を追うことができます。
「株」というワードの検索数を見てもわかりやすく減少しています。株に関して検索している人が明らかに減っているので、興味を失っていることがよくわかります。
筆者は9年も株をやっているので個別株をやめる人が続出する周期は何回も経験しています。
個別株をやめる人が増える時期は当然ですが株式市場が下落している時です。下落トレンドというものです。
日経平均株価は年初来-9.59%となっています。
円安という株式市場に追い風の状態で、今は金融緩和中でもある中この株安です。
本当に選ばれし銘柄を買っていないことには利益をあげられない難しい相場です。
つまり、個別株をやめた人が多いのは、今の相場がとても難しいからに起因します。
相場が簡単な時には当然個別株をする人が増えますので、これは景気サイクルと同様、繰り返しなのです。
個別株は難しいと言っても、何が難しいのでしょうか?
個別株が難しい理由とは?
基本的にリスクが高い
個別株の難しさはリスクが高いことです。信用取引などでレバレッジをかければあっという間に破産してしまいます。
こんなにリスクが高い投資でありながら、まともに銘柄分析もしないまま、スマホでぽちぽちと株の売買ができてしまうのは、長年株をやっている筆者からすれば狂気の沙汰です。
個別株は安定ファンドなどと違い、1日で-5%、-15%など平気で動きます。そんな個別株に全力投資してしまい人生を変えようとする人が後を絶ちません。
このような人生を賭けた投資をしてしまう人の多さが、株式投資がギャンブルと呼ばれてしまう所以だとも思います。
基本的には筆者が個人が個別株投資に取り組むことはおすすめしません。
あまりにも難易度が高すぎるためです。難易度が高いのですから、それ相応の努力は必要です。
しかしどういうわけか、これもメディアの影響かと思いますが、あまりにも簡単に億万長者になってしまったといった英雄をテレビなどで取り上げ持ち上げてしまうせいで、
株式投資は簡単であるとの認識を国民に植え付けてしまったのではないかと思います。
それが原因で、堅実に複利で資産額を伸ばしていくという投資の基本知識が国民からすっぽり抜け落ちているように思います。
しかし、実際にテレビに出演した本当に株式投資で大金持ちになった人たちは、株式投資の才能があり、且つ死ぬ思いで努力をした人達です。
その点を履き違えてはいけないと思います。
プロスペクト理論が人間心理を支配している
投資家も一人の人間です。
そのため、プロスペクト理論が大きな重しとなって投資家に影を落とします。
プロスペクトとは英語のProspectのことであり、期待や予想、見込みなどのニュアンスを持つ。プロスペクト理論はリスクを伴う状況下での判断分析として、米カーネマン氏らが1979年に公表した論文のタイトル名。
プロスペクト理論により、従来の投資効用理論では説明のつかない投資家の判断行動が現実に即した形で解明された。例えば、投資家は収益よりも損失の方に敏感に反応し、収益が出ている場合は損失回避的な利益確定に走りやすい。一方、損失が出ている場合はそれを取り戻そうとしてより大きなリスクを取るような投資判断を行いやすいとされる。
プロスペクト理論は行動ファイナンスや行動経済学と呼ばれる心理学の要素を応用した新たな経済学の分野を切り開いたとして、同氏は2002年のノーベル経済学賞を受賞している。
参照:野村證券
つまり、含み益が出ている場合は早く利益確定を行い、含み損が出ている場合は塩漬けするという行動を取りやすいということです。
個別株投資で利益を得るための鉄則は損小利大です。損失は小さく抑えて、利益は大きく伸ばすということです。
しかし、プロスペクト理論にはまると利小損大となります。少しでも含み益になると利益を確定して、含み損となれば放置して傷を深くしていくのです。
バブル期に投資をして10分の1になっても保有し続けている年配の方が多くいらっしゃることからも、プロスペクト理論を克服するのは難しいのです。
個別株の中長期保有の難しさ
具体的に、株式投資は長期保有なら大丈夫といった意見もちらほら聞きます。
なぜこのような言説が主流になったかと言うと、非常にわかりやすいのですが、これは米国株が数ある暴落を経験しながらも株価指数が上昇を続けたからに他なりません。
しかし、長期で保有して良かったのはアマゾン、アップルなど、一部の銘柄であり、それ以外の銘柄は屍となっていることがほとんどではないでしょうか?
S&P500でも上位5銘柄のみが以下の通りアウトパフォームしており、他は日本のTOPIXとパフォーマンスが変わりません。
株を長期で保有するのは、保有だけしていればよいということではまずありません。
まず、どの銘柄を長期で保有するのかをしっかり分析する必要があります。
たとえば業績好調であり、商品力が強く、社会を変えるインパクトがあるなど、将来の社会展望を見据えながら投資判断をしていく必要があります。
そして、会社の通知表とも言える決算書は四半期に一度提出されます。
その決算書を吟味し、商品力は健在か、業績はまだまだ伸びそうか、経営陣は変わらず熱心に経営しているか、などを総合的に判断して保有継続を意思決定する必要があります。
必要あれば買い増しを行うなど、長期保有とは買ってほったらかしという投資ではないのです。
上記を怠っているようであれば、宝くじを買うようなものです。
また人気銘柄だから買う、雑誌で特集されていたから買う、などしている投資家は例外なく大損して株式市場からいなくなります。
保有銘柄を塩漬けにして、何十年後かにほぼゼロに近い金額で現金化することになります。
株式の長期保有とは、実に難しい投資なのです。高配当狙いの投資は、元本が毀損し最終的に損失が残る方が多い馬鹿げた投資なので取り上げもしません。
リターンの分布は偏在している
先ほどの話と関連しているのですが、各銘柄のリターンは正規分布のようになっているわけではありません。
実際は少数の銘柄が卓越したリターンを出し、多くの銘柄は平均以下のリターンしか出せないのです。
以下は2018年のTOPIXの各銘柄のリターンをプロットしたものです。
TOPIXの平均リターン以下の銘柄が半分以上分布していることがわかります。
つまり、一部のスター銘柄によって株式市場は成長しているということです。
そのスター銘柄を選び出すことができなければ、損失を被るということです。
確固たる銘柄選択術を有していなければ、株式市場からカモにされてしまいます。
短期トレードの難しさ
短期トレードも当然難しく、株式市場の状況を常に把握して、株の需要と供給を見極めつつ、緊張感を持ってトレードする必要があります。
デイトレであれば一日中相場に張り付いている必要がありましし、スイングトレードでも毎日の相場動向、銘柄動向、決算情報など時間がどれだけあっても足りないくらいです。
筆者の友人のトレーダーは決算期になると何百社と決算を精査するようです。人それぞれスタイルは異なりますが、各人が命を賭けて努力しているのは間違いありません。
投資の難しさの本質
上記で長期保有、短期トレードの場合の株式投資の難しさについて例を出しましたが、投資の難しさの本質というものがあります。
例えば投資をするにあたり様々な投資手法を学び、指標を学び、チャートの形を覚え、実践に移し努力を継続していくと思います。
しかし、それだけではダメなのが株式投資です。株式投資に限らず投資とは、常に新たな状況に適応していく必要があるということです。
試験で言えば常に過去の知識をフル稼働させた応用問題を常に解いているということです。マーケットは常に進化していて、投資家自身もマーケットを超える進化をしていかなければ、投資で利益を獲得するなど夢のまた夢ということです。
過去の問題集だけを解いていても、大きな成果は出せません。相場に適応し、常に自分自身をアップデートして、勝負どころを見極める必要があるのです。
投資信託やETFなどが良いのか?
上記で株式投資の難しさを筆者の経験から書きましたが、個別株が難しいので投資信託を買うというのは一つの良い選択肢だと思います。
株式相場のことを常に考えているプロに投資は任せたいものです。
インデックスファンドはどうか?
そして、今流行しているのがインデックスファンドです。
米国のS&P500に連動するETFが非常に人気です。それらに投資をする彼らの合言葉が「米国株は絶対に上昇するからいつでも買いだ」です。
しかし、それは本当なのでしょうか?筆者は非常に懐疑的であり、これまで30年間実行されてきた金融緩和により米国株はたしかに上昇してきました。
しかし、これからは金融引き締めが起こり、同じような規模の金融緩和は起きない可能性も残されています。
最終的に米国株は上昇するかもしれませんが、明らかに世界の様相が変わってきています。過去と同じようなリターンを生むと誰が決めたのでしょうか?
過去の奴隷になってはいけません。市場は常に進化し、新たなものを生み出します。10年前には暗号通貨はまだ知れ渡ってはいませんでした。
しかし、今やドルからの逃避先としてポジションを確立していくと言われている代表資産です。
アクティブ投信の成績も鵜呑みにできない
日本のアクティブ投信に関しては体たらくを続けており、とてもおすすめできる代物ではありません。以下の記事を参考にしてみてください。
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アクティブ型とパッシブ型(=インデックス型)の投資信託の違いとは?どちらのファンドがおすすめか徹底比較。現実を知っていれば大損地獄も回避可能
投資初心者の方であれば殆どの方が投資信託を検討されたことがあるのではないでしょうか? 自分で銘柄を選択せずにプロが運用してくれるので安心感がありますからね。 しかし、一言に投資信託といっ ...
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少しだけ内容を抜粋しますが、アクティブ投信は手数料が高くてリターンが低いという散々な結果となっています。(金融庁資料より)
分類 | 5年累積リターン平均 | ファンド数 |
全ファンド(パッシブ) | 22.60% | 450 |
全ファンド(アクティブ) | 9.70% | 3029 |
国内株式 (パッシブ) | 40.0% | 131 |
国内株式(アクティブ) | 30.9% | 526 |
先進国株式(パッシブ) | 37.0% | 63 |
先進国株式(アクティブ) | 12.0% | 415 |
新興国株式(パッシブ) | 15.2% | 22 |
新興国株式(アクティブ) | 12.8% | 220 |
グローバル株式(パッシブ) | 32.6% | 2 |
グローバル株式(アクティブ) | 8.2% | 34 |
まとめ
個別株投資の難しさについて、解説しました。
基本的には、個別株投資を志すのであれば、フルタイムでやるくらいの覚悟が必要ですし、副業でやっても良い代物ではありません。
本業でできないのであれば、相場で命を賭けている投資家に資産を運用してもらうなど、考え方は様々ありますので検討してみましょう。