2021年から海運株が急激に上昇し日本の株式市場を賑わせました。
現在では配当利回り上位を海運株が独占しています。以下は2023年2月15日時点の配当利回りランキングです。
上位6社が海運会社で独占されています。
銘柄 | 配当利回り | |
1 | 商船三井 | 16.51% |
2 | 日本郵船 | 15.46% |
3 | 川崎汽船 | 12.15% |
4 | 乾汽船 | 8.89% |
5 | ユナイテド海運 | 8.93% |
6 | 乾汽船 | 8.87% |
7 | 三井松島HD | 8.59% |
大手二社の商船三井と日本郵船については以前分析しました。
→ 【高配当株】商船三井の配当金はなぜ高い?過去の利回り、配当性向の推移や業績などから今後の見通しを評価
→ 日本郵船の配当利回りはなぜ高い!?なぜ株価も10倍に上がったのか?海運株の今後の株価の見通しとともに徹底解説!
本日分析するのは業界第3位の川崎汽船についてです。
川崎汽船は特に株価の上昇が大きくテンバガーを達成しています
本日は以下のポイントについてみていきたいと思います。
✔︎ 川崎汽船の株価上昇の要因とは?
✔︎ なぜ株価が現状下落していないのか?
✔︎ 今後の見通しとは?
川崎汽船の株価が10倍となった要因とは?
株価というのは以下の簡単な掛け算で導くことができます。
株価 = EPS(1株あたり利益) × PER
PERというのは金利や、その時の投資家の期待収益率などによって変動する要素となり算出は非常に難しいものとなっています。
ただ、EPSつまり「1株あたり利益」については企業が発表する純利益を「発行済株式数」で割返すことで算出することができます。
以下はEPSのグラフと売上高、営業利益、純利益、EPSの推移です。
売上高 | 営業利益 | 純利益 | EPS | |
Mar-07 | 1,085,539 | 61,356 | 51,514 | 186.2 |
Mar-08 | 1,331,048 | 129,648 | 83,011 | 300.1 |
Mar-09 | 1,244,317 | 71,603 | 32,420 | 117.2 |
Mar-10 | 838,032 | -52,074 | -68,721 | -248.4 |
Mar-11 | 985,084 | 58,609 | 30,603 | 110.6 |
Mar-12 | 972,310 | -40,563 | -41,351 | -149.5 |
Mar-13 | 1,134,771 | 14,886 | 10,669 | 38.6 |
Mar-14 | 1,224,126 | 28,854 | 16,642 | 60.2 |
Mar-15 | 1,352,421 | 47,988 | 26,818 | 97.0 |
Mar-16 | 1,243,932 | 9,427 | -51,499 | -186.3 |
Mar-17 | 1,030,191 | -46,037 | -139,478 | -504.5 |
Mar-18 | 1,162,025 | 7,219 | 10,384 | 37.5 |
Mar-19 | 836,731 | -24,736 | -111,188 | -401.5 |
Mar-20 | 735,284 | 6,840 | 5,269 | 19.1 |
Mar-21 | 625,486 | -21,286 | 108,695 | 393.0 |
Mar-22 | 756,983 | 17,663 | 642,424 | 2322.5 |
Mar-23 | 940,000 | 85,000 | 650,000 | 2349.8 |
EPSが2007年から2020年の平均が▲37.4円であったことを考えると2022年3月期の2,322円、2023年3月期予想の2,349円がいかに凄い数値かわかりますね。
EPSの急騰が川崎汽船株急騰の主因となるのは疑いようがありませんね。
EPS急騰の要因はコンテナ船市況の高騰による持分法取り込み益の上昇
先ほどの業績の表を見て気がついた方がいらっしゃるかと思いますが、売上高は寧ろ減少しているのに純利益は急騰しています。
直近の2022年12月期決算を見てみましょう。2022年4月から12月末までの9ヶ月分の損益計算書(PL)です。
純利益6382億円のうち5735億円が営業外収益の持分法による投資利益となっています。
この持分法による投資利益は商船三井と日本郵船の時と同じくOCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)社からもたらされたものとなります。
OCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)とは?
海外海運企業に対抗するために2018年に日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社のコンテナ事業を統合させて設立された統合企業。世界シェアは6%。
持分法利益というのは出資した比率に応じてONE社の利益を取り込んで川崎汽船の営業外利益に上乗せするという性質のものです。
たとえばONE社が1兆円利益を出して川崎汽船が30%投資していれば持分法利益は3000億円ということになります。
そして、なぜONE社が巨額の利益を得られたかということについては、ひとえにコンテナ船市況の高騰によるものというのが解答となります。
以下のとおり2021年からコンテナ船市況は高騰し、2022年後半から暴落しています。
コンテナ船市況が急騰した理由は以下です。
✔︎ パンデミックによるコンテナ生産不足(供給不足)
✔︎ パンデミックによる港湾の混乱と人手不足(供給不足)
✔︎ パンデミック回復期の需要の爆発(需要増)
供給が低下して需要が増大したことでバブル状態となっていたのです。
株価が下落しない理由とは?高配当利回りが株価を支える状況が継続!
バブルというのは必ず崩壊するものです。実際、EPSの上昇をもたらしていた市況もパンデミック以前の水準に2022年後半から急速に落ち込んで行きました。
株価というのは先行きを見通して動くものです。将来の利益が落ち込むことがわかっているのであれば、株価は下落していきます。
しかし、最初に見た通り株価は上昇した水準で耐えています。
これはひとえに、配当利回りの高さに起因しています。
配当金は以下の通り急速に高騰して、現在では配当利回りは12%という水準になっています。
配当金 | |
2013/03 | 8.33 円 |
2014/03 | 15.00 円 |
2015/03 | 28.33 円 |
2016/03 | 16.67 円 |
2017/03 | 0.00 円 |
2018/03 | 0.00 円 |
2019/03 | 0.00 円 |
2020/03 | 0.00 円 |
2021/03 | 0.00 円 |
2022/03 | 600.00 円 |
2023/03(予) | 600.00 円 |
株価が下落すれば配当利回りが高くなるので購入する投資家が増えて株価が支えられているのです。
株価が下落する時期はいつ?今後の見通しを分析!
現在、既に市況が下落していますが過去契約分が残っているので利益はまだ高い水準を保っています。
それに伴いキャッシュを稼ぐことが出来るので、高い配当金を出すことができて株価を支えることができています。
しかし、近い将来利益はパンデミック以前の水準に戻ることは、ほぼ確実となっています。市況が戻っているからです。
では、株価が下落するタイミングはいつかというと、現在の水準の配当金が出せないと判明する時点となります。
2023年3月期は高い配当金を維持できるので問題ないですが、2024年3月期は現在の水準は不可能です。
市況が暴落した後の水準の単価での契約が主流になってくるからです。
ということは2023年3月期の配当金が確定する権利確定日の2023年3月31日以降に株価は弱含んで行くことが想定されます
では今から高い配当を目指して2023年3月31日まで保有するべきかというと、非常に難しい選択となります。
既に中間配当で300円だしているので、3月31日の配当金の予想は300円となります。
現在の株価3300円から計算すると3月31日まで保有した場合の配当利回りは9%となります。
たしかに9%の配当金を得ることはできますが、配当落したあとは株価も相応に下落します。売却する時あh権利落ちで下落したあとになります。
さらに今から3月31日までの価格変動リスクも負うことになります。業績が沈むことがわかっている銘柄の場合、下方圧力の方がつよいですからね。
つまり配当金を理由にここから投資をするのはリスクが高いという状況になっています。
安定した10%程度のリターンを下落を回避しながら得られる投資先については以下でもお伝えしていますのでご覧いただければと思います。
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まとめ
今回のポイントを纏めると以下となります。
✔︎ 株価急騰の理由は市況の急騰による関連会社からの持分法利益取り込みによるもの
✔︎ ただし市況は既に暴落しており近い将来の業績低迷は必至
✔︎ 現在は高い配当利回りによって株価が支えられている
✔︎ 2024年3月期は現在の利益を維持できず配当金も下落が見込まれ株価は暗い見通しとなっている
✔︎ ここから海運株に投資をするのは危険