(考察シリーズ)高配当で評判のピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配型)を徹底評価。電力・公益セクターに集中投資をするファンドはキャピタルゲイン税金を考慮すると低リターン?

投資信託

高配当で評判のピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配型)を徹底評価。電力・公益セクターに集中投資をするファンドはキャピタルゲイン税金を考慮すると低リターン?

考察シリーズです。たまには高配当株へ資金を投じるファンドについても見ていきたいと思います。

普段は私自身は高配当株とは無縁の生活をしています。

しかし、日本の投資信託は高配当株に資金を投じてどのようなリターンを獲得しているのかが気になりました。

 

基本的に、配当を出す企業というのは安定して収益を獲得できているとアピールする目的の一つで株主還元をしていきます。高配当もそうですし、自社株買いも同様に株主還元策としては有名です。

 

しかし、配当を出す企業というのは、もうもはやその市場に成長できる余地が残されていないことを認識しており、成長意欲もなく現状維持が目的になります。

企業サイクルの、衰退期へ突入していくということです。配当を出すことは、堅実さを示しますが、高配当は少し危険な匂いがします。株主の離脱を積極的に抑えにいくことに等しいからです。

 

高配当株に投資をする投資信託であれば、基本的にはキャピタルゲインは狙えませんので、配当と元本の損失(プラスの場合もありますが)を足し引きして残ったお金、これがリターンになります。

今回のピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)はどのようなファンドなのか、どのようなリターンになっているのかを見ていきましょう。

 

結論としては、「高配当株に投資するファンド」とそのままのイメージで、本気で資産を増やしていく上ではスローペースすぎるとの判断で、私は投資はしません。

 

➡︎ 投資信託銘柄考察シリーズ

 

 

ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)とは?

冒頭でも少し触れましたが、ピクテ・グローバル・インカム株式は安定して配当を出す企業へ投資をするファンドです。

対象は世界中で、セクターは当然ながら公益(電力・ガス・水道や電話通信、運輸、石油)に集中します。

 

インフラ関連に偏りますので「キャピタルゲインは興味なし」と言える投資であることを理解しましょう。

 

世界分散しているので、配当株という属性上、かなりリスクは限定的なファンドなのではないかと思います。配当とリターンをしっかり見ていきたいですね。

 

ファンドの概要:世界の高配当利回りの公益株に投資する毎月決算型

目論見書を一部抜粋します。

 

<商品分類>

  • 単位型・追加型:追加型
  • 投資対象地域:内外
  • 投資対象資産(収益の源泉):株式

<属性区分>

  • 投資対象資産:その他資産
  • 決算頻度:年12回(毎月)
  • 投資対象地域:グローバル(日本を含む)
  • 投資形態:ファンドオブファンズ

 

ファンドの目的

ファンドは、主に投資信託証券に投資を行い、安定的かつより優れた分配金原資の獲得と信託財産の成長を図ることを目的に運用を行います。主に世界の高配当利回りの公益株に投資します。特定の銘柄や国に集中せず、分散投資します。毎月決算を行い、収益分配方針に基づき分配を行います。

 

高配当に特化、そして安全な株式とされる公益株にある意味で一点集中の清々しいファンドです。とにかく配当なんだという意気込みが伝わってきますね。

公益株に投資、さらに世界分散しますので、とにかくリスクなしの配当狙いです。

ポートフォリオ:分散方法は米国集中、電力集中?

国際分散、銘柄分散をしているとのファンドですが、どのくらい分散しているのでしょうか?

まずは、2022年2月末のポートフォリオですが、投資先の国は米国集中になっています。

 

国・地域名 構成比率
米国 66.00%
英国 7.40%
ドイツ 7.00%
スペイン 5.50%
イタリア 4.00%
デンマーク 3.10%
カナダ 2.30%
中国 1.70%
ポルトガル 0.60%
ブラジル 0.50%
その他の国 0.90%
預金、その他 1.00%

 

以下は2020年末のポートフォリオでしたが、米国の比率は変わらず、大きな異動はありません。

 

国・地域名 構成比率
米国 65.30%
英国 8.30%
イタリア 7.00%
ドイツ 6.70%
スペイン 6.20%
カナダ 2.90%
ブラジル 1.00%
フランス 0.80%
ギリシャ 0.50%
チリ 0.40%

 

なんだかんだ、と言ってはなんですが、やはり米国に集中しますよね。米国株といえば何十年も増配する配当貴族銘柄などで溢れていますので、米国は避けて通れません。

小型株でリターンを狙わない限り、やはり米国大型株で堅調なリターンを狙うのは良い戦略なのかもしれませんね。ただし、個人で株式投資はそれでもやはり難しいものだと思います。

 

セクターは以下の通りとなっています。電力、公益セクターが最大です。配当銘柄ならではです。

業種名 構成比率
電力 48.60%
総合公益事業 37.30%
独立系発電・エネルギー販売 5.40%
エクイティ不動産投資信託 2.60%
水道 2.10%
その他の業種 3.10%
預金等、その他 1.00%

 

以下は2020年末の構成比率ですが、高配当ポートフォリオはやはり比重が変わりませんね。

 

業種名 構成比率
電力 57.00%
総合公益事業 33.00%
エクイティ不動産投資信託 2.20%
水道 2.10%
陸運・鉄道 1.50%

 

電力、公益に偏っていますね。わかりやすく配当銘柄が多いセクターに振っています。

 

具体的なポートフォリオを見てみましょう。以下は2022年2月末時点の10位までの銘柄です。

 

順位 銘柄 業種/セクター 組入比率 予想配当利回り
1位 ネクステラ・エナジー 米国 電力 4.80% 2.20%
2位 RWE ドイツ 総合公益事業 4.80% 2.40%
3位 センプラ・エナジー 米国 総合公益事業 4.70% 3.20%
4位 ドミニオン・エナジー 米国 総合公益事業 4.00% 3.10%
5位 WECエナジー・グループ 米国 総合公益事業 4.00% 2.80%
6位 CMSエナジー 米国 総合公益事業 3.60% 2.70%
7位 SSE 英国 電力 3.60% 5.30%
8位 ナショナル・グリッド 英国 総合公益事業 3.60% 4.70%
9位 イベルドローラ スペイン 電力 3.50% 4.30%
10位 アメレン 米国 総合公益事業 3.50% 2.50%

 

高配当過ぎず、確実に国を支えているインフラ事業銘柄に分散です。ちなみに以下は2020年末のポートフォリオです。上位銘柄の顔ぶれは変わりません。基本変えてはいけないポートフォリオですからね。

 

順位 銘柄 業種/セクター 組入比率
1位 ネクステラ・エナジー 米国 電力 4.80%
2位 RWE ドイツ 総合公益事業 4.60%
3位 イタリア電力公社 イタリア 電力 4.40%
4位 センプラ・エナジー 米国 総合公益事業 4.40%
5位 イベルドローラ スペイン 電力 4.20%
6位 ドミニオン・エナジー 米国 総合公益事業 3.90%
7位 SSE 英国 電力 3.80%
8位 ナショナル・グリッド 英国 総合公益事業 3.80%
9位 WECエナジー・グループ 米国 総合公益事業 3.50%
10位 アメレン 米国 総合公益事業 3.20%

 

ネクステラ・エナジー、イタリア電力公社は高配当でよく聞く名前ですね。トップ10は電力と総合公益事業に特化しています。

 

 

実際の実績:コロナショック後はやはり実生活が戻るまで停滞する模様

基準価額を見ていきましょう。純しさんは設定来下がり続けています。分配再投資後は約3倍となっていますが、配当をする限りはこの指標は幻です。

 

パフォーマンス

 

9,950億円の純資産を保有するファンドです。規模は大きいですね。日本は配当がとにかく人気ですから、この規模も頷けます。(本来は複利で運用する方が何倍もリターンがあるはずなのですが)

 

配当ファンドなので基準価額がぐんぐん上昇していく類のものではありません。

コロナショック後にいわゆる「普通の生活」が人々にある程度戻ってきましたので、純資産は少しずつ戻しています。

リターンを見ていきましょう。配当銘柄の落とし穴はリターンが著しく低くなり、配当以上に元本を毀損してしまう点です。

 

運用パフォーマンス

それではトータルリターンをみていきましょう。トータル・リターンには再投資された配当金、利払い、投資対象(株式、債券、投資信託など)の価格の増減が含まれています(基準価額の増減に配当金を足して、これを購入価格で割った数字がトータル・リターン)。

 

1年 3年(年率) 5年(年率) 10年(年率)
トータルリターン 19.85% 7.07% 6.66% 8.03%
カテゴリー 6.91% 12.42% 9.25% 11.11%
+/- カテゴリー 12.94% -5.35% -2.59% -3.08%
ファンド数 314本 223本 158本 87本
標準偏差 15.3 16.15 13.99 13.44
カテゴリー 16.09 19.44 17.39 16.99
+/- カテゴリー -0.79 -3.29 -3.4 -3.55
ファンド数 314本 223本 158本 87本
シャープレシオ 1.3 0.44 0.48 0.6
カテゴリー 0.61 0.66 0.55 0.67
+/- カテゴリー 0.69 -0.22 -0.07 -0.07
ファンド数 314本 223本 158本 87本

 

10年平均で8%程度なのでまずまずです。同じ高配当カテゴリーの中では低いパフォーマンスとなっています。

但し、気をつけなければならないのはこれは複利運用した場合に8%のパフォーマンスであり、実際は配当が投資家に支払われます。そしてそこでキャピタルゲイン税である20.315%が毎度かかってきますので、元本に充当できるのは支払われた配当金の80%になります。

つまり、8%には全く満たず、毎年5%程度のリターンになるイメージです。これでは物足りないですね。どうしても入金されたレコードが毎月見たい人向けの商品となります(非合理的であり、リターンを目指す方が効率が良いです)。

 

私であれば、コンスタントに損を出さずに運用してくれるファンドに預入しますが、流石に5%で満足をするわけがないのでさらに高いリターンを出してくれるファンドを選びます。

 

 

投資妙味:資産を増やすより配当の入金に快感を覚える人にはアリ

ぶっちゃけていうと、好みの問題です。配当で税金を払ってお金が減ってでも、目先の入金(記録)が欲しい、見たい!という人はこのような高配当ファンドでMAX5%程度の運用リターンを享受すれば良いと思います。

もっともっと資産を大きくしたい、複利効果を享受してしっかり投資に取り組みたいという方は、より良いファンドがあると思います。

 

➡︎ 投資信託銘柄考察シリーズ

 

 

結び

金融資産2〜3億円で完全リタイアは可能か?安定した生活を送るための運用法(50歳、60歳など年代別ポートフォリオを検討)

 

長期的に資産を形成し老後の安定資産を築くために必要なことは、ただ一つです。それは、どのような市場環境であっても資産を守り「堅実なリターンを複利で積み上げる」ことです。しかし、多くの人は派手なリターンを謳う運用先に虜になり、資産を増やすどころか失ってしまうのです。しかし、この情勢は変わりません。歴史は繰り返すのです。いつの時代も「無知はコスト」です。

 

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資産運用の極意は「プラスのリターンを複利で積み重ねること」であり富裕層に到達するにはこの方法しかありません。

 

上記を実現するための投資先(ファンド)を選ぶポイントは、非常にシンプルです。以下は大枠ですが、これを外さなければ大きく失敗することもありません。

  1. 相場環境に左右されない明確で確固たる投資理論・哲学を有する
  2. 過去に成果を出し続けているファンドマネージャーによる運用

 

世の中にはあまりにも間違った情報が溢れていると日々感じていました。
そして今回、筆者の証券アナリストとしての知見や、マーケットに関する仕事に従事した経験を基に様々なファンドを分析してきました。

その結果(堅実運用の思考とおすすめと言える投資先)をまとめました。ぜひ参考にしてくださいませ。

 

 

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