楽天証券はレバレッジ型の投資信託を非常に多く組成しています。今回は逆に順相関つまり日経平均が上昇したら、レバレッジを掛けた分だけ上昇するレバレッジ型のブル投資信託について分析していきたいと思います。
取り上げるのはレバレッジ投資信託の中でも人気を博している楽天日本株4.3倍ブル・楽天日本株トリプルブルです。
特徴と成績から今後の見通しまで見ていき、如何にこの商品が粗悪なものであるかを説いていきたいと思います。
冒頭で言ってしまってアレなのですが、今もしこの投信に投資をしている人がいるのであれば即座に売却してください。酷すぎる商品です。
楽天日本株4.3倍ブル・楽天日本株トリプルブルの概要
楽天日本株4.3倍ブル・楽天日本株トリプルブル共にレバレッジ型投資信託の中で人気の高い投資信託です。以下のように楽天日本株4.3倍ブルについては全体の買い付けランキングでも4位にランクインしています。
本当にこのような商品が買付ランキング上位にいるのは良くないことだと思います。あまりにも勉強が足りていない投資家が軽はずみに危険な商品を買いすぎだと思います。断言しますが絶対に楽天日本4.3倍ブルで富裕層になれる人はいません。
証券会社が儲かって終わりです。
さて、楽天日本株4.3倍ブルと楽天日本株トリプルブルは両者ともかける倍率は異なります。
しかし、基本的には同じ構造のレバレッジ型の投資信託となります。
「ブル」とは米国NYの雄牛(ブル)の絵の通り、角が下から上に突き上げているので元来株価がどんどんあがる好況相場のことを指します。(反対はベア相場です)
レバレッジ型の投資信託の場合は順相関することを意味します。楽天日本株4.3倍ブルは日経平均が上昇すれば4.3倍掛け、楽天日本株トリプルブルは3倍掛けで増加します。
つまり、ある日、日経平均が5%上昇した場合は、楽天日本株4.3倍ブルは21.5%の上昇、トリプルブルは15%の上昇。
反対に日経平均が5%下落した場合は、楽天日本株4.3倍ブルは21.5%の下落、トリプルブルは15%の下落となります。
投資家から集めた投資金を元に日経平均先物を買い建てることによりレバレッジをかけています。
楽天日本株4.3倍ブルであれば1000万円集めたら、1000万円を証拠金として4300万円分の日経平均先物を買い建てるわけです。
レバレッジ型投資信託の特徴:レバレッジは日々の値動きに対してかけられる
楽天日本株4.3倍ブル・楽天日本株トリプルブルの成績を紐解く前に、レバレッジ型投資信託の特徴についておさらいしていきたいと思います。
レバレッジ型で注意しなければいけないのは、1日の値動きに対してレバレッジが掛けられるということです。
つまり、例えば日経平均が2日後に今日の株価に対して+10%になったとしても、楽天日本株4.3倍ブルは+43%となるわけではないのです。
例として現在わかりやすく日経平均が20,000円、4.3倍ブルが1000円(実際とはことなりますが単純の為)だとします。
0日目:
- 日経平均 20,000円
- 4.3倍ブル 1000円
1日目:
- 日経平均21,000円(+5%)
- ⇒4.3倍ブル+21.5%⇒1215円
2日目:
- 日経平均22,000円(0日目比+10%ですが、1日目比では4.7%の上昇となります)
- 4.3倍ブルは+4.7%×4.3倍=+20.21%、1460円
0日目比では日経平均が10%上昇なので4.3倍ブルは43%上昇し1430円となっているかと思ってしまいます。
実態は一日毎の値動きにレバレッジ掛けた結果1,460円となり46%上昇という結果になるのです。
右肩上がりで上昇していく場合はレバレッジブル型の投資信託はタイトルのレバレッジよりも、高いリターンを出す傾向にあります。
以下は対象インデックスが5日間で2倍、つまり+100%となった場合の、トリプルブル型の成績です。
100⇒ 587と+487%という驚異的な結果となっています。
一方、対象となるインデックスが下落する場合は、下落幅のレバレッジ倍ほどは下落しないという特徴もあります。
以下は同じく対象インデックスが5日間で100⇒80と20%下落しているので、トリプルブル型は順連動なので▲20%×3倍=▲60%となりそうなものですが、実際は100⇒49.34%と▲50%の下落に留まっています。
ここまで聞くと、良い時はレバレッジ以上にぐんぐんと値を伸ばし、悪い時はレバレッジ倍以下の損失で済むのでお得だと考えてしまう方もいらっしゃると思います。
市場停滞期にはインデックスが変化しない場合であっても、レバレッジ型の投資信託は価格が下落するという特徴があります。
以下は対象インデックスが10ずつ変化して最終的に6日後に100に戻るという値動きを図示したものです。
①100⇒90⇒100⇒110⇒100⇒90⇒100
②100⇒110⇒100⇒90⇒100⇒110⇒100
いずれにしても下落しています。
この停滞期の弱さは以下で説明する運用成績でダイレクトに出てきますので、覚えておいてください。
楽天日本株4.3倍ブル・楽天日本株トリプルブルの運用成績
それではお待ちかねの両者の成績を見ていきましょう。
楽天日本株4.3倍ブル・楽天日本株トリプルブルの運用成績を日経平均と比較
ヤフーファイナンスのデータを使い日経平均と比較してみました。
まずは過去3年の値動きです。
ピンク:日経平均
青:楽天日本株4.3倍ブル
緑:楽天日本株トリプルブル
楽天日本株4.3倍やトリプルブルは基本的には短期勝負で使う金融商品です。長期(無思考)で握って良い銘柄ではありません。
短期でマクロ経済見通しをしっかりと理解した上での判断が必要になりますので非常に難易度が高いです。
上記の通り楽天日本株4.3倍の直近1年間のリターンは-60%、トリプルブルのリターンは-40%です。ボロボロですね。
非常に高いリスクを受け入れた結果が、日経平均以下とあっては割に合いません。
なぜ直近の1年はこんなにマイナスになっているかというと日経平均自体が振るわないからです。どんな時に日経平均は上昇するのか?これを理解できていない限りは絶対に手を出してはいけない商品です。
また、少し日経平均が上昇するくらいではそのリターンもほぼありません。「大きく、急激に」上昇が必要です。それはどんな時なのか?と考える必要があります。
どんな時かというと、不況になり、金融緩和が実施される初期です。所場代が安い時ということになります。
しかし、どのタイミングでそれを見極めるかは非常に難しく、投資上級者のみが活用して良い商品がレバレッジ商品です。
一般的な投資家には、何度も言いますがレバレッジ商品は難しすぎます。手を出すのはやめましょう。
楽天日本株4.3倍ブル・楽天日本株トリプルブルの運用成績をデータで分析
先程は視覚からみていきましたが、データでも紐解いていきましょう。
ファンド名 | 楽天 日本株4.3倍ブル | 楽天 日本株トリプル・ブル | 日経平均 |
運用会社名 | 楽天 | 楽天 | -- |
カテゴリー | 株式ブル型 | 株式ブル型 | -- |
基準価額 | 8,216円 | 51,118円 | -- |
純資産 | 44,298 百万円 | 8,377 百万円 | -- |
ヘッジ | 無 | 無 | -- |
インデックスファンド | インデックス以外 | インデックス以外 | -- |
最低申込金額 | 10,000円 | 10,000円 | -- |
販売手数料 | 3.30% | 3.30% | -- |
信託報酬等(税込) | 1.24% | 1.02% | -- |
償還日 | 2025年6月13日 | 2025年6月13日 | -- |
運用年数 | 6年 | 12年 | -- |
経費率 | 1.42% | 1.19% | -- |
売買回転率 | -- | -- | -- |
デュレーション(債券の場合) | -- | -- | -- |
格付(債券の場合) | -- | -- | -- |
トータルリターン1年 | -45.78% | -30.14% | -8.42% |
トータルリターン3年(年率) | 8.71% | 15.10% | 7.45% |
トータルリターン5年(年率) | 9.68% | 14.54% | 6.77% |
トータルリターン10年(年率) | -- | 22.80% | 10.56% |
シャープレシオ1年 | -0.85 | -0.8 | -- |
シャープレシオ3年 | 0.11 | 0.27 | -- |
シャープレシオ5年 | 0.13 | 0.28 | -- |
シャープレシオ10年 | -- | 0.42 | -- |
標準偏差1年 | 53.85 | 37.93 | -- |
標準偏差3年 | 82.64 | 56.25 | -- |
標準偏差5年 | 74.79 | 51.27 | -- |
標準偏差10年 | -- | 53.75 | -- |
楽天日本株4.3倍ブルを例にとってみると標準偏差が5年で74.79となっています。
非常に高い標準偏差(=値動きの荒さ)となっています。トータルリターンが5年で9.68%となっていますが、これは2020年の異次元緩和によるボーナスタイムが影響しており、あんな相場は二度と来ないと言って良いくらいの相場でした。
その相場上昇がノイズとなっており、直近1年はその揺り戻しもあり、またまだまだ相場が下落する可能性の方が高く、実際の楽天ブル商品の現実がそろそろ見えてくる頃と思います。
下落耐性に強くしっかり運用リターンがでるヘッジファンドという選択肢
レバレッジ投資信託の最大の欠点は長期投資に向かず資産が大幅下落する可能性が高いことです。
資産を大きく増加させるためには、長期投資がマストです。そして複利運用であることが大前提です。
上記の楽天日本株ブル4.3倍などは、短期で勝負をする上級者向け商品なので、真剣な資産運用には全く向かない商品です。寧ろ廃止した方が良いとも思える商品です。
さて、長期で複利運用しか大きな資産は築けないと申し上げましたが、どのように投資をしていけば良いのでしょうか?
過去に様々な記事でその運用先について既に述べていますが...
30-40歳で貯金3000万円超えたら資産運用で完全リタイア(FIRE)は可能?何年暮らせる?まとまったお金(アッパーマス層)があったら持てる選択肢について。
貯金2000万円で投資を始めるなら、おすすめは元本保証?適切な投資先・資産運用手法を考察。(株式投資/インデックス投資信託/ヘッジファンドなどで一括・複利計算シミュレーション)
筆者のポートフォリオの最大ポーションはヘッジファンドとなっています。
ヘッジファンドとは相場が好調な時も、軟調な時もリターンを狙うことができるファンド形態となっています。
【2022年から始める堅実複利運用】日本国内おすすめヘッジファンドをランキング形式で紹介!投資失敗で大損しないための富裕層が実践する哲学を理解しよう。
例えば、筆者が投資しているヘッジファンドであるBMキャピタルも幾度の暴落を無傷で乗りきりリターンを出し続けています。
以下で詳しくお伝えしていますので、着実に資産を形成していきたい方はご覧頂ければと思います。
今、株価が割安jになっているので高いリターンを狙う好機といえるでしょう。
↗︎↗︎↗︎ BMキャピタルは怪しいのか?運用10年目を迎え安定実績が評判の日本最大のヘッジファンド「BM CAPITAL」について投資家目線で徹底評価!
楽天日本株4.3倍ブル・楽天日本株トリプルブルの今後の見通しとまとめ
楽天日本株4.3倍ブルと楽天日本株トリプルブルはブル型なので、日経平均がどんどんと上昇していく局面であればレバレッジ以上のリターンを見込めます。
下落すれば大きく凹むのはもちろんのこと、停滞してもレバレッジ投資信託の宿命ともいえる下落を被ることになります。
仮に投資をするのであれば、確度が高く日経平均が上昇する局面に限って有効なのですが、今後の日経平均はどうなっていくのでしょうか。筆者は上昇するはずがないと考えています。米国の金融引き締めが既に開始されているからです。
引き締めの中でどうやったら株価が強い上昇をするのでしょうか。株を買わなければならないのは基本的に「金融緩和」が実行される時です。
そして、楽天日本株ブルなどレバレッジ投信はさらに購入機会が少なく、金融緩和のスタート時に買いの時期は限定されます。
そのタイミングがわかる人であれば、トライしてみてもよいかもしれませんが、わざわざ資産がそこまで大きくならない効率の悪い投資をするべきかというと、それは筆者なら明確に「間違っている」と答えます。
市場が下落する中でもプラス運用を目指す商品を選ぶべきだと思います。
市場が下落するので全ての商品がダメである、つまり日本株はダメに決まっているという間違った意見も世の中には溢れています。どうかこのような勉強不足の人の主張に耳を傾けるのはやめてください。