今回はまたも巷で色々と名前を聞くファンドを投資歴の長い筆者の目線で考察していきたいと思います。
これまで様々な投信を紐解いて分析してきましたが、ページビューが非常に多く、需要があるのだなと感じます。
今回はベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド 『愛称:ロイヤル・マイル』を取り上げます。
どのようなファンドなのでしょうか?今から投資するにはどうなのでしょう?
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド 『愛称:ロイヤル・マイル』とは?
あまりにも名称が長すぎるので、ここからは「ロイヤル・マイル」と呼ばせていただきます。
ベイリーギフォード社の投資哲学を実践するファンドとされていますが、ベイリーギフォード社とはどのような会社なのでしょうか?
ベイリーギフォードは100年以上前に設立されたパートナーシップ制の資産運用会社です。弊社は1989年に三菱UFJ信託銀行(旧東洋信託銀行)との間で合弁会社を設立しました。日本の運用・助言資産残高の全ては三菱UFJ信託銀行グループを経由したものとなっており、同グループを通じて数多くの日本お客様に弊社プロダクトにご投資いただいていることを幸運に思っています。
ベイリーギフォードでは投機ではなく、長期投資を行います。弊社における株式の投資哲学では成長性に焦点を当て、またグローバルの視点を取り込みます。独自のファンダメンタルズ分析が、長期に亘るボトムアップによる銘柄選択の成功の鍵を握ります。英国エディンバラを本拠に、知的好奇心と厳格さを共存させたアプローチを効果的に実践しています。私たちのプロセスでは、投資アイデアの共有や活発な討論が極めて重要な役割を果たします。弊社はこれまで内部成長のみによりビジネスを着実に伸ばしてきました。今日では、株式特化型、債券特化型、マルチアセットのポートフォリオを世界中のクライアントのために構築し、運用・助言資産残高は52兆816億円にのぼります。(2021年9月末現在)
運用・助言残高は52兆816億円とは大規模ですね。三菱UFJ国際投信と手を組み、同社の運用商品を日本でも展開したということですね。日本チームはあまり所謂エリートが携わっているとも感じないです。
ロイヤルマイルの評判
評判よりも本質を見て自分で判断すべきですが、筆者も少し気になったので収集してみました。まぁ、金融引き締めなので最近の暴落の話題が多いですね。
[Bloomberg] ベイリー・ギフォードに打撃を与えたハイテク株の下落は、英国の年金基金のグループをボラティリティにさらすリスクがあります... https://t.co/C0KPgdc20t
— ワールドニュース of ビジネス/株式/FX/仮想通貨 (@money_and_biz_) February 23, 2022
ベイリーギフォードの投資信託、ARKみたいに大幅下落していて、なかなかつらい…
(とはいえ、長期でみれば期待できるのかな?とも思ってますが)— うきひこ (@uqihiko) February 17, 2022
ベイリーギフォードのロイヤルマイルを買うなら、メットライフのライフインベストも悪くないかも。ファンドの信託手数料より安い。
まっ、保険なんでほかの手数料かかるかもしれないが。 pic.twitter.com/NMfPjMj9eG— プロイセン公爵 (@tanielyoyo) October 31, 2021
2022年9月に設定した「ベイリー・ギフォード世界成長企業戦略/SMT.LN外国投資証券ファンド 〈愛称:クロスオーバー・グロース〉」の基準価額が7,000円下回る
他のファンドより、直近の下げがキツい
2月22日の基準価額は6,989円(前日比▲4.6%)#投資信託#ベイリーギフォード#三菱UFJ国際投信
— CrvenaZvezda (@CrvenaZvezdaJP) February 23, 2022
ホント底抜けだなー。どうしたんだ、ここ。落ち方がエグすぎる。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株F【03311191】:銘柄詳細:投資信託 - Yahoo!ファイナンス https://t.co/Hb2wsOiJDO
— 野良投資家Q (@nora_q_inv) February 15, 2022
ベイリー・ギフォードの『ロイヤル・マイル』、2ヶ月で25%くらい下落してないか。大丈夫か、ここ。
— 野良投資家Q (@nora_q_inv) January 25, 2022
ロイヤルマイルの投資戦略とポートフォリオ
投資手法は「成長株長期投資」です。10年先を見据えた投資を100年以上実施してきたとのこと。
ロングターム・グローバル・グロース戦略(LTGG戦略)となんだか凄そうな名前の投資戦略を実行しているようです。
Morningstar Award “Fund of the Year 2020”「国際株式型(グローバル)部門」でも最優秀ファンド賞を受賞しています。
具体的な運用成績は後半で確認していきます。
ポートフォリオは以下の通りとなっています。40銘柄中のトップ10銘柄です。
No. | 銘柄 | 国・地域 | 業種 | 比率 |
1 | AMAZON.COM INC | アメリカ | 一般消費財・サービス | 6.7% |
2 | TESLA INC | アメリカ | 一般消費財・サービス | 5.6% |
3 | NVIDIA CORP | アメリカ | 情報技術 | 5.2% |
4 | ASML HOLDING NV | オランダ | 情報技術 | 4.7% |
5 | KERING | フランス | 一般消費財・サービス | 4.6% |
6 | TENCENT HOLDINGS LTD | 中国 | コミュニケーション・サービス | 4.6% |
7 | ILLUMINA INC | アメリカ | ヘルスケア | 4.5% |
8 | MEITUAN-CLASS B | 中国 | 一般消費財・サービス | 4.0% |
9 | ATLASSIAN CORP PLC-CLASS A | アメリカ | 情報技術 | 3.6% |
10 | CLOUDFLARE INC - CLASS A | アメリカ | 情報技術 | 3.3% |
米国ハイテク、他国一般消費財などが入っています。あまり特徴のあるポートフォリオではありません。個人投資家が組みそうなポートフォリオとも、言えてしまう内容で少し期待はずれでした。わかりやすく長期成長株投資ですね。
あとで運用実績は見ていきますが、金融緩和引き締め時は厳しい動きを見せるとここで予想します。
ロイヤルマイルの設定来の基準価額推移
ロイヤルマイルの基準価額を見ていきましょう。2022年になり右肩下がりですね。純資産総額も落ち込んでいます。
これは当然で、2020年3月あたりからの上昇を見てほしいのですが、右肩上がりに基準価額も純資産も大きく増加していますね。
ちょうど歴史上初めてとも言える異次元金融緩和が影響しています。以下はFederal Funds Rateですが、2020年初頭に急激に金利が下げられ、今も横ばいとなっていますよね。この時期は成長株は猛烈に上昇します。
以下はFEDのバランスシートです。2020年3月から凄まじい角度で膨らんでいますよね。これが金のばら撒きであり、無限に株式市場に資金が流入していき、上がってはいけない株式銘柄も沢山暴騰しました。
長年相場にいますが、投機的に株を買う人にはこれ以上のチャンスはないと言えるくらいの相場でした。
しかし、2021年末より、金融引き締めが意識され始め、世界中で株価は大きく下落しました。すでにパーティは終わりました。これから長期投資している投資家、ファンドはかなりの利益を吐き出すことになります(すでに2022年初頭で暴落してしまいましたが)
ロイヤル・マイルも長期投資戦略ですから、結局は獲得してきたリターンを吐き出してしまっています。
筆者は2022年以降複数年は金融引き締めにより、これまで上昇してきた株価の大半が下落し幻となってしまうと考えています。
株式市場のサイクルとはそのようなものだからです。当然、また不況になり、金融緩和を実施すればまた株は高くなります。
しかし現在はインフレ率が米国は前年比+8%程度となっており、手に負えない水準です。
このまま不況になる可能性もありますが、政策金利は0.25%ともう下げる余地がありません。
FRBの大失態だと思っています。故に、しばらく成長株に投資をするような投資戦略は報われないと思います。
割安株戦略のみがワークします。グローバルマクロでバリュー株投資戦略が向う数年の大きなトレンドになると思います。
すでに米国株式市場ではバリュー株が9ヶ月も成長株をアウトパフォームしており、このような相場が始まると複数年継続するものです。
ロイヤルマイルの投資手法が成長株の長期戦略である以上、数年は辛抱する必要がありますし、タイミングとしても次の不況で金融緩和が実施された時がよいタイミングだと思います。今ではありません。
運用実績と見通しについて
実際の運用実績を見ていきましょう。実はまだロイヤルマイルは3年程度しか実績がありません。2019年からですから、最高の相場である2020年、2021年が全面に出てきます。モーニングスターアワードもこのような短い期間しか投資していない先に賞を与えて良いのか・・・?と少し考え込んでしまいましたが、続けます。
年 | 1年 | 3年(年率) |
トータルリターン | -22.66% | 22.24% |
カテゴリー | 16.24% | 13.54% |
標準偏差 | 31.94 | 27.66 |
シャープレシオ | -0.71 | 0.8 |
にも関わらず、すでに1年が-22.66%と凄まじい下落となっています。
金融引き締めが昨年のテーパリングから始まり、本格的に実行に移す時期ですからね。2022年はもっと株式市場は荒れるのかもしれません。
さらに細かいメッシュで見ると以下の通りです。2022年初頭は株式市場が大暴落をしました。まだまだあると思います。高インフレ率で政策金利が下限一杯という訳のわからないことになっているからです。下落耐性の強いファンドを選ばないと大変なことになってしまいます。
1カ月 | 3カ月 | 6カ月 | 1年 | 3年(年率) | |
トータルリターン | -1.16% | -29.50% | -26.19% | -22.66% | 22.24% |
朝方は停戦交渉に対する期待で株式は上昇したが、午後に入ると失速。S&P500種はテクニカル分析で一段安の可能性を示す「デスクロス(死の十字架)」を形成した。大型ハイテク株で構成するナスダック100指数は、高値からの下げが20%を超え、2020年3月以来約2年ぶりの弱気相場入りとなった。ロックダウン(都市封鎖)を敷かれた中国深圳でサプライヤーが操業を停止したことから、アップル株は下落。アリババグループグループや百度(バイドゥ)などで構成するナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数は12%下げた。
今後の見通しとしては、このような弱気相場は一度始まると長いので複数年かかります。
ロイヤルマイルも例外ではなく、複数年は下落を覚悟した方が良いと思います。
まとめ
ロイヤルマイルについて取り上げました。
長期成長株戦略とのことで非常に分析しやすかったです。成長株で長期投資は筆者は危険な投資だと思っておりますが、当たれば大きいというメリットもあります。
ただし、当たる時期は不況で低金利政策が実行された初期です。今はその一番遠いところにおり、ロイヤルマイルに急いで投資する理由はないと思います。下落耐性の強い投資先を選ぶようにしましょう。