総合商社株はバフェットが注目していることもあり堅調に推移しています。
例えば、総合商社首位の三菱商事は以下の通りコロナの底から株価は2.5倍以上になっています。
先日、筆者が分析した丸紅の株価も同様に2.5倍になっています。
→ 人気株!丸紅の株価は今後どうなる?なぜ安い?10年ホールドすべきか、今が売り時なのかを決算結果、配当利回りやPERなど指標から検証
総合商社というと一般的には以下の5社のことを指します。
- 三菱商事
- 三井物産
- 住友商事
- 伊藤忠商事
- 丸紅
では、この次の規模の商社はどうでしょうか?
本日は総合商社第6位の双日についてみていきたいと思います。
過去10年の双日の株価推移!2021年以降風向きが変わった?
まずは、双日の今まで過去10年の株価推移をみていきたいと思います。
以下の通り700円台から2800円まで約4倍になっています。大躍進ですね。特に2021年から昇竜拳をしています。
ただ、リーマンショック前からの期間でみると今よりも高い株価だったことを考えると、ようやく復調してきたとみるのが正しそうですね。
しかし、4000円近い株価から一気に500円まで下落したリーマンショックというのは大きな危機であったと認識させられますね。
現在は大きく上昇していますが、それでもPERは約7倍、PBRは約0.8倍という水準になっています。
今回は以下の点を中心にお伝えしていきたいと思います。
どのような事業を行なっているのか?
今回はなぜ株価が依然として割安なのか?
業績推移はどうなっているのか?
双日に事業概要とポートフォリオとは?
まずは双日の事業概要についてみていきたいと思います。
総合商社は事業投資で利益を稼いでいる
商社と聞くと、どのような事業をしていると想像しますでしょうか?
特にご年配の方は昔ながらの貿易で稼いでいると誤解されている方が多いかと思います。
たしかに、現在でも貿易は行なっています。しかし、現在では収益の主な部分は投資ではありません。
現在では貿易で稼いだ資金を元手に投資を行い投資収益が大半を占めるようになっています。
まるで日本国そのもののようですね。日本はかつては貿易収支の黒字で稼いでいましたが、現在は所得収支で経常収支の黒字をまかなっています。
所得収支というのは投資から得られる利息や配当金です。
基本的に大企業や国は事業で稼いで、最終的には投資で収益を拡大させていきます。これは、人の人生でも同じことがいえますね。
最初に労働で稼いで、老後は年金だけでは足りない分を配当所得などで裕福に生きていくというのが理想ですからね。
商社に限らず世界的な成熟した大企業達も基本的には事業投資で収益を拡大しています。
一から事業を立ち上げるより、うまくいく事業を見極めて購入する方が収益は加速しますからね。
双日の事業ポートフォリオ
双日の事業ポートフォリオは以下の通りとなっています。
以下をみると金属資源の利益の比率が大きいですね。資源価格の上昇がダイレクトに業績に影響しています。
次は化学品の利益が大きくなっています。
10年前までは資源といえば三菱商事と三井物産の専売特許の様相を呈していましたが、現在では双日も資源投資を行っているのですね。
前職は五大商社だったので、双日の躍進は正直意外でした。
直近はインフラやヘルスケア関連事業に投資を積極的に行なっています。
市況に依拠しない安定事業の積み上げを目論んでいることがわかります。
双日の純利益の推移!株価上昇はなぜ起こった?
双日は投資業を行なっているので、売上よりも純利益をみることが重要となります。
以下は双日の純利益とEPSとBPSの推移です。EPSというのは「1株あたり純利益」でBPSは「1株あたり純資産」です。
当期純利益 | EPS | BPS | |
2007/03 | 58,766 | 254.6円 | 2,303.8円 |
2008/03 | 62,693 | 271.6円 | 2,255.1円 |
2009/03 | 19,001 | 82.3円 | 1,382.9円 |
2010/03 | 8,794 | 38.1円 | 1,526.0円 |
2011/03 | 15,981 | 69.2円 | 1,430.8円 |
2012/03 I | -1,040 | -円 | 1,429.5円 |
2013/03 I | 13,448 | 58.3円 | 1,657.5円 |
2014/03 I | 27,250 | 118.1円 | 1,992.3円 |
2015/03 I | 33,075 | 143.3円 | 2,387.1円 |
2016/03 I | 36,526 | 158.3円 | 2,254.4円 |
2017/03 I | 40,760 | 176.6円 | 2,385.1円 |
2018/03 I | 56,842 | 246.3円 | 2,540.8円 |
2019/03 I | 70,419 | 305.1円 | 2,678.7円 |
2020/03 I | 60,821 | 263.5円 | 2,509.0円 |
2021/03 I | 27,001 | 117.0円 | 2,682.3円 |
2022/03 I | 82,332 | 356.7円 | 3,154.1円 |
2023/03 I | 111,247 | 482.0円 | 3,629.3円 |
2024/03予 I | 95,000 | 411.6円 | -円 |
純利益は東日本大震災後に一時期ゼロにまで落ち込みましたが、大きく持ち直していますね。
直近は資源価格の高騰が業績を持ち上げています。純粋にEPSの増加が株価上昇の要因ですね。
ただ2024年3月期は今期より落ちると見込まれているのがネガティブなポイントではあります。
双日の株主還元策(配当・自社株買い)
では株主還元策についてもみていきたいと思います。
増配傾向が続き高配当利回りを維持
総合商社株は株主還元策を重視します。双日もその傾向は変わりません。
以下は双日の配当金の推移です。
2013/03 | 15.00 円 |
---|---|
2014/03 | 20.00 円 |
2015/03 | 30.00 円 |
2016/03 | 40.00 円 |
2017/03 | 40.00 円 |
2018/03 | 55.00 円 |
2019/03 | 85.00 円 |
2020/03 | 85.00 円 |
2021/03 | 50.00 円 |
2022/03 | 106.00 円 |
2023/03 | 130.00 円 |
2024/03(予) | 130.00 円 |
ただ、当然株価事態も上昇しているので配当利回りは以下の通り5%程度で推移しています。十分高配当ではありますね。
自社株買いを含めた総還元の推移
自社株買いと配当金を足し合わせると以下の通り右肩上がりで増加しています。2020年3月期以降、積極的に自社株買いを行なっていますね。
決算期 | 当期純利益 | 配当総額 | 自己株式取得 | 総還元 | 配当性向 | 総還元性向 | 期末時価総額 | 配当利回り | 総還元利回り |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2014/03 | 27,250 | 5,004 | - | 5,004 | 18.4% | 18.4% | 220,264 | 2.27% | 2.27% |
2015/03 | 33,075 | 7,506 | - | 7,506 | 22.7% | 22.7% | 251,551 | 2.98% | 2.98% |
2016/03 | 36,526 | 10,008 | - | 10,008 | 27.4% | 27.4% | 289,096 | 3.46% | 3.46% |
2017/03 | 40,760 | 10,007 | - | 10,007 | 24.6% | 24.6% | 349,168 | 2.87% | 2.87% |
2018/03 | 56,842 | 13,760 | - | 13,760 | 24.2% | 24.2% | 426,761 | 3.22% | 3.22% |
2019/03 | 70,419 | 21,266 | - | 21,266 | 30.2% | 30.2% | 488,085 | 4.36% | 4.36% |
2020/03 | 60,821 | 21,011 | 15,058 | 36,069 | 34.5% | 59.3% | 317,881 | 6.61% | 11.35% |
2021/03 | 27,001 | 12,006 | 15,000 | 27,006 | 44.5% | 100.0% | 390,468 | 3.07% | 6.92% |
2022/03 | 82,332 | 24,546 | - | 24,546 | 29.8% | 29.8% | 504,855 | 4.86% | 4.86% |
2023/03 | 111,247 | 30,131 | 30,000 | 60,131 | 27.1% | 54.1% | 691,579 | 4.36% | 8.69% |
配当利回りに自社株買いを合わせたそう還元性向は10%を超える局面も存在しています。
かなり株主を重視している企業であるといえるでしょう。
双日の株価はなぜ依然として安いのか?
最初にお伝えしたとおり双日は株価が10年前から4倍になっているにも関わらずPERは7倍未満と割安に放置されています。
ただ、これは双日に限ったことではなく総合商社全般に言えることです。
総合商社は様々な事業に投資をするコングロマリッドの様相を呈しています。
コングロマリッド企業ではコングロマリッドディスカウントが発生します。
多くの産業を抱える複合企業(コングロマリット)の企業価値が、各事業ごとの企業価値の合計よりも小さい状態のこと。多角化は業績変動を減らすなどの利点がある一方、事業の全体像や相乗効果が見えにくい場合は市場評価を下げやすい。
経営効率が悪くなるとの懸念が背景にある。例えば、ある高収益事業で稼いだ利益を低収益事業に回される可能性がある。特定の事業出身の経営トップがなじみの薄い別の事業について、誤った経営判断をしてしまうケースもありうる。
複合企業の価値を精緻に評価するのが投資家にとっても難しいという問題もある。そうなると投資が手控えられ、株価が実力値を下回りやすくなる。複合企業は専業企業に比べて6~7%程度市場から低く評価されているとの研究もある。
確かに総合商社では儲けた事業のキャッシュが、あまり儲かっていない事業の投資に使われてしまったりしますからね。
また、一部門のトップがいきなり社長になるので、全体最適が計られないというリスクも抱えています。
これらのディスカウント要因によりバリュエーション上はずっと低く評価されているのです。
双日の今後の株価を予想
重要なのは今後の見通しです。見通しは以下の2点から厳しい展開を想定しています。
景気後退により資源価格に下落圧力がかかる
事業ポートフォリオの項目でお伝えした通り、双日の現在の純利益を支えているのは金属資源やエネルギー価格です。
そのため、エネルギーや資源価格が下落すると業績見通しは急速に悪化します。
これは別に双日に限った話ではなく、総合商社全般に言えることです。
エネルギーや金属資源価格が下落するのは需要が低下したり、供給が飽和する時に起こります。
前者については景気後退が発生すると世界中で需要低下が発生して価格は暴落していきます。
そして、2023年6月現在、米国で今後1年以内の景気後退が非常に高い確率で発生する状況となっています。
現在、世界はグローバリゼーションが進行しているので米国が風邪をひくと世界中が風邪をひきます。
つまり、グローバルリセッションが迫っているのです。このような環境下で資源価格の下落で痛手を被る商社に投資するのはリスクが高いですね。
景気に関係なる安定したリターンを積み上げていく選択肢については以下で取り上げていますのでご覧いただければと思います。
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円高調整の可能性も増してきている
2023年に日本株が堅調に推移している大きな要因は円安にあります。
現在、日本株の投資家の7割は外国人です。円安が進行した結果、海外投資家から日本の資産が安くなり買われているのです。
この円安はインフレに対応するための欧米の中央銀行の金融引き締めと、日本の金融緩和姿勢の堅持というポリシーミックスにより発生しています。
欧米の金利が上昇する一方、日本の金利はゼロ近辺となっているので金利差が拡大して日本円が相対的に売り込まれているのです。
しかし、今後景気後退が発生するとこの状況が一転してます。
景気後退となると欧米で金融緩和に転じることになるので、当然金利が低下し日米の金利差が縮小します。
すると今度は一転して円高に調整していきます。日本株全体に逆風が吹き荒れることになるのです。
まとめ
本日のポイントをまとめると以下となります。
ポイント
- 双日は直近株価が4倍になっている
- 貿易より事業投資が中心になっている
- 資源部門が全体の利益の6割をしめる
- 株主還元には積極的
- 株価が安い理由はコングロマリッドディスカウントに起因
- 今後は景気後退による資源価格下落と円高が逆風となる