元本保証は難しかったとしても、なるべく安全に元本が減らないように投資をしたい。
このようなニーズに合わせて組成された投資信託が「投資のソムリエ」です。
投資のソムリエは確かに防御力は高い投資信託です。
しかし、果たして長期的に資産を形成するという観点にたった時に魅力的な投資信託なのでしょうか?
本日は「投資のソムリエ」の特徴を紐解いた上で、投資する価値がある投信なのかという点について切り込んでいきたいと思います。
投資信託「投資のソムリエ」の特徴とは?
まずは特徴について見ていきましょう。
投資対象は世界の資産
投資のソムリエの投資対象は世界の「債券」「株式」「リート」に分散投資しています。
これら8個の資産を安定資産とリスク性資産で分類しています。
【安定資産】
国内債券
為替ヘッジ先進国債券
【リスク性資産】
国内株式
国内リート
先進国株式
先進国リート
新興国債券
新興国株式
リスクを4%に抑えることを目標としている
投資のソムリエの運用目標はリスクを4%に抑えることです。
今、そもそもリスクってなに?下落を4%以内に止めること?
と思われた方が多いと思います。
投資におけるリスクは標準偏差のことで平均リターンからどれくらいの確率でどれくらいぶれるかを示した指標です。
リスクが小さい投資商品はリターンが赤の範囲におさまり、リスクが高い投資商品は青の範囲におさまることになります。
統計学的にはリスクが4%ということは以下を意味します。
平均リターンから±4%×2(=±8%)に収まる確率が約95%
平均リターンから±4%×3(=±12%)に収まる確率が約99.7%
実際、投資のソムリエは以下の通りリスクを約4%に抑えています。一方リターンは3%台と非常に低いのですが。。リターンについては追って詳細を追っていきます。
相場環境の応じて組み換えを適宜行いポートフォリオの最適化を図っている
投資のソムリエは各資産のポートフォリオに占める配分を決めているのですが、毎月比率を見直しています。
安定資産が下落する局面ではリスク性資産の比率を増やして、反対にリスク性資産が下落する局面では安定資産を増やすというように組み換えています。
また、両方とも落ちる局面では現金比率を高めるとしています。
まあ、実際されができたら苦労しないんですがね。
あくまで上記は理想論です。今、どの資産が下落する局面か分かるのは神だけです。
この機動的配分戦略はあまり過度な期待を抱かない方がよいでしょう。
現在のポートフォリオ構成
現在2022年2月末時点での投資のソムリエのポートフォリオ構成は以下となっています。
基本配分比率というのは月毎に決める目標比率で、組み入れ比率は実際に組み入れられている比率です。
資産 | 基本配分比率 | 組み入れ比率 | |
1月 | 2月 | ||
国内債券 (安定資産) |
16.5% | 6.0% | 7.6% |
為替ヘッジ先進国債券 (安定資産) |
38.5% | 56% | 53.8% |
新興国債券 (リスク性資産) |
6.5% | 7.0% | 3.5% |
国内株式 (リスク性資産) |
13.5% | 13.0% | 6.3% |
先進国株式 (リスク性資産) |
11.0% | 3.5% | 1.7% |
新興国株式 (リスク性資産) |
2.5% | 4.5% | 2.3% |
国内リート (リスク性資産) |
4.5% | 3.5% | 1.7% |
先進国リート (リスク性資産) |
4.0% | 3.5% | 1.7% |
現金 | 3.0% | 3.0% | 21.4% |
上記を見てもらうと1月から先進国株式の比率を大きく落としています。
これは米国の株式市場がインフレによって金融政策が引き締めが意識されていることを考えると妥当な判断です。
そして、最も注目すべきは現金の比率です。
目標比率3%に対して21.4%と大幅に現金に寄せています。これはずっと相場を見ている筆者から言わせると、正しい判断といえるでしょう。
実際、米国のS&P500指数は年初来大きく値下がりしていますからね。
S&P500指数は年初の4,818ドルを最高値に現在は4000ドル台前半まで10%以上下落しています。
今回投資のソムリエは危機回避ができているということができるでしょう。
推移としても年末から現金比率を高めて、リスク性資産を減らしているのが読み取れます。
投資のソムリエのリターンは魅力的?
リスク回避的な運用であることはわかりましたが、重要なのはリターンです。
結局、資産が増えていなければ投資をしている意味がないですからね。以下は設定されて以来の投資のソムリエの基準価格の推移です。
この好調な相場が続いた2012年から2022年で基準価格が20%しか上昇していないのは由々しい事態ですね。
データでみると以下の通りとなります。
年 | 1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
---|---|---|---|
トータルリターン | -2.60% | 2.12% | 1.69% |
標準偏差 | 3.56 | 3.05 | 2.83 |
シャープレシオ | -0.73 | 0.70 | 0.60 |
10年のデータはないので、5年のデータを元に今後1年のリターンを確率毎に予測すると以下となります。
平均リターンから1.69%±2.83%×2(=▲3.97%〜7.35%)に収まる確率が約95%
平均リターンから1.69%±2.83%×3(=▲6.80%〜10.17%)に収まる確率が約99.7%
最大損失が7%程度と低く抑えられる反面、残念ながら最高でも10%、殆どは良くても5%以内のリターンに収まることが示されています。
しかし、平均リターンの1.69%はもはや投資している意味がないレベルですよね。
eMAXISバランス(8資産均等型)とリターンを比較
投資のソムリエは様々な資産を組み入れているバランスファンドです。
ですので同じく様々な資産に分散して投資しているeMAXISバランス(8資産均等型)と比較していきたいと思います
eMAXISバランス(8資産均等型)は投資のソムリエと同じ8資産を均等に組み入れています。
組み入れ比率が違うのが「投資のソムリエ」との違いですね。
定期的にリバランスを行うことでポートフォリオの比率を調整しています。
eMAXISバランス(8資産均等型)と投資のソムリエのリターンを比較したものが以下となります。
赤:投資のソムリエ
青:eMAXISバランス(8資産均等型)
投資のソムリエをeMAXISバランス(8資産均等型)が圧倒していますね。ただeMAXISバランス(8資産均等型)はコロナショックのような局面で脆弱性を発揮しています。
一長一短はありますが、長期的な資産形成を考えるのであれば、この2つであればeMAXISバランス(8資産均等型)の方が合理的ですね。
まとめと更に良い選択肢について
投資のソムリエは国内と海外の債券、株式、REITを組み合わせてポートフォリオを組成しています。
各資産の組み入れ比率は流動的に調整しています。価格の変動幅を表すリスクは4%以内に収めていますが、その代わりリターンは1%台と非常に低くなっています。
同じバランスファンドのeMAXISバランス(8資産均等型)はリターンは投資のソムリエよりは高いですが、代わりに暴落耐性が低くなっています。
投資のソムリエへの投資を検討している方が求めているのは、安全性を重視しながら資産を着実に増やしてくれる投資先ではないでしょうか?
以下では筆者が投資している運用以来一度も年ベースでマイナス成績を出さず、年平均10%以上のリターンを出しているファンドを含めて紹介しています。