日本は長らくデフレ国家として君臨していましたが、ついにインフレ大国としてその名を轟かせることになりました。
あのデフレ大国の日本がなんと前年比+3.3%(7月データ)のインフレ率を記録しています。
現在はアメリカを超えるインフレ率を記録しています。
円安が進み、輸入物価が高騰し、日経平均が上昇中、つまりは運用を行っている人のみが資産防衛できている状況です。
運用を行っていない人は、単純に物価の上昇に対して円の価値が下がっていますので資産は減少していることになります。
インフレは資産を持っている人のみが勝者となる、まさに資本主義的な格差を浮き彫りにする環境です。
そして、日本の場合は経済成長もしていない中でのインフレを経験しており、「スタグフレーション」状態であることも深刻です。
今回の記事では、そんなスタグフレーション環境での投資戦略をどのように考えていくか、スタグフレーション環境下での強い資産について述べていきたいと思います。
日本国民が困窮中・・・そもそもスタグフレーションとは?
スタグフレーションとは冒頭でも少し説明しましたが、定義を確認しましょう。
スタグフレーションとは、景気が後退していく中でインフレーション(インフレ、物価上昇)が同時進行する現象のことをいいます。この名称は、景気停滞を意味する「スタグネーション(Stagnation)」と「インフレーション(Inflation)」を組み合わせた合成語です。
通常、景気の停滞は、需要が落ち込むことからデフレ(物価下落)要因となりますが、原油価格の高騰など、原材料や素材関連の価格上昇などによって不景気の中でも物価が上昇することがあります。これが、スタグフレーションです。景気後退で賃金が上がらないにもかかわらず物価が上昇する状況は、生活者にとって極めて厳しい経済状況といえます。わが国では、1970年代のオイルショック後にこの状態となっていました。
景気が悪いのに、物価が上昇する現象です。国民は景気が良くないので稼ぐが増えていないのに、物価は上昇を続けてしまい買いたいものを買えない、という状況に陥り生活も苦しくなり、精神的にも追い詰められていきます。
例えば、現在は日本は円安が進んでいますが、どう考えても欧米への旅行は割高ですよね。ハワイでレストランでディナーをする場合、一人5000円で良かったのに、今は米国のインフレも相まって1万円かかることも珍しくありません。
米国はスタグフレーションではない?
ただ、米国は賃金が上昇しているので給料も伸びており、高額になってしまったラーメンを若者も遠慮なく食しています。
マンハッタンの「ヘルズキッチン」と呼ばれる繁華街のお店で、頼んだのは定番の「E.A.K.しょう油ラーメン」。濃厚なスープと一緒にあっという間に平らげてしまいました。日本を思い出す至福の時間の対価はずばり、21.5ドル(約3100円)。ラーメンの価格は17ドルですが、平均的な割合のチップ(18%)を含め、税込みでこの値段になります。
唐揚げなどサイドメニューを頼み、最後にラーメンでしめるのがニューヨーカーの流儀のようです。サイドや飲み物を入れれば円換算で5000円は軽く超えます。それでも、ラーメンを食べに来るのは富裕層と言うよりもむしろ普通の若者が中心です。
米国のインフレは強い経済と共に上昇しており、賃金もインフレしています。
この賃金インフレが米FRBの頭を悩ませているのですが、いずれにせよ国民は日本ほど閉塞感はないはずです。
日本の賃金はインフレに追いついていない
日本の賃金はというとなんとこのインフレ下でも「減少幅を縮小した」というニュースが出るヘンテコな状況が続いています。
実際は物価上昇に給与の伸びが追いついておらず、実質賃金の減少が続いている状況です。生活がどんどん苦しくなっているわけですね。
厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、1人あたりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.2%減った。マイナスは14カ月連続。基本給にあたる所定内給与が28年3カ月ぶりの伸び幅となり、実質賃金の減少幅は4月の3.2%から縮んだ。
所定内給与は25万2132円で前年同月比1.8%増えた。1995年2月以来の増加幅となった。ただ、物価上昇に給与の伸びが追いついておらず、実質賃金の減少が続く。
岸田首相は最低賃金を2030年代半ばまでに1500円にすると発言しています。
どうやってやるのでしょうか?というか任期終わってるので何でも言えそうです。
具体的な話がないのでなんとも言えない空虚な時間が続いています。
岸田文雄首相は31日、最低賃金について「2030年代半ばまでに全国平均が1500円となることを目指す」と表明した。最低賃金は10月から平均1004円に上がるものの、主要国に比べ水準はなお低い。物価高で消費は弱含んでおり、賃上げ持続で内需主導の成長を促す。
なぜ日本はスタグフレーションが起きている?
かいつまんで説明すると以下です。
- Covid-19パンデミック発生→世界中の紙幣ばら撒き政策によるインフレ発生(通貨を発行しバラまくため通貨の価値が減少)
- 先進国で緩和継続を実行しているのは日本のみ→金利差による各国に対する通貨安発生(異次元円安:1USD=152円までドルが上昇)
- 日本の輸入依存体質(資源・食料を海外から輸入して生計を立てる)→円安など要因による輸入物価の高騰
それぞれ少し解説します。
1.Covid-19の影響
コロナ騒動は世界中が大波乱でしたね。日本でも全員がマスクを着用し、自宅ワークをする人も増えました。
世界中の人々が巣篭もりしていたわけで大いに人生計画が狂った人も少なくなかったと思います。
さて、コロナパンデミックで世界中が経済危機に陥ろうとしており、米国を中心とし各国政府が紙幣を国民にばら撒き、景気刺激を積極的に行いました。
災害や伝染病など人為的ではない経済危機が起ころうとしていましたのでアクセル全開で資金をばら撒いた結果、今はパンデミックも終焉しインフレだけが残る状態になりました。
米国のインフレ率推移は以下です。一時は前年同期比+9%の上昇となり、FRBは急速に利上げを行わざるを得ませんでした。
現在は3%台まで落ちていますがサービスインフレが止まらず、まだまだ利下げには転換できない状況です。
また、コアインフレも収まっておらず、原油価格も上昇に転じています。
ここからインフレ再燃もあり得る状況となり、輸入物価の影響を受ける日本としては厳しい状況であることは間違いありません。
1970年代もインフレは上昇し、落ち着き、再燃し、を3回も繰り返しました。まだまだ安心できる状況ではないですね。
2.先進国で緩和継続を実行しているのは日本のみ→金利差による各国に対する通貨安発生
上記の通り、米国の政策金利引き上げもどこまで続くかわからないのです。
金利差により、日本の通貨安は続いています。
日本に関しては政策金利は当然まだ引き上げておらず、イールドコントロールも継続中です。
日本のインフレ率は3%を超え米国よりもインフレが進んでいるにも関わらず、金融緩和を維持しているという不思議な状況なのです。
とはいえ、緩和を維持している背景には経済が活性化しておらず、引き締めを行えば経済危機に陥ってしまう日本の体質が問題になっています。
そもそも、政策金利を引き上げるとなると、この30年間変動金利で住宅ローンを組んできた人達が殲滅してしまいます。
不動産(マンションなど住宅ローン)が引き金となり一気に恐慌に陥っても不思議ではありません。
そもそも利上げをするということは借り入れを行い設備投資をする企業の金利負担が重くなり収益悪化が見込まれます。
そもそも経済が成長していない、賃金も上昇しておらず家計消費も落ち込んでいる日本で、利上げなどをするという選択肢はないのです。
つまり八方塞がりということです。米国が不況に陥り、利下げをするのを辛抱強く待つしかないのです。
3.日本の輸入依存体質(資源・食料を海外から輸入して生計を立てる)→円安など要因による輸入物価の高騰
日本が自前で資源エネルギーや食料を賄えるのであれば、輸入物価に悩まされることも少なかったでしょう。
日本は極東の島国であり、輸入に頼らざるを得ません。カロリーベースの食料自給率はなんと38%です。
これまで日本の先人達が世界中で資源・食料を確保し輸入ルートを作ってきてくれたことにより私達は何不自由なく暮らしてこれたのです。
しかし、残念ながら通貨安であれば、輸入に頼っている国は大きなインパクトを受けてしまいます。
また、これは筆者の個人的見解に過ぎませんが、「外貨を稼ぐ人間」が著しく減少していると感じます。
やれフレックスだ、やれワークライフバランスだと、戦争が遠ざかり平和になった代わりに、国民の戦闘力が落ちたように感じます。
少し古い考え方かもしれませんが、今回のような通貨安の時に痛い目を見ているのが我々なのです。結果的に苦しむのは自分達です。
外貨を稼げない国が、世界と伍していけるのか?筆者は甚だ疑問です。
以下の通り他国と比較してもエネルギー自給率も低く、今回の輸入物価高騰は受け入れざるを得ません。
どの資産に投資する?スタグフレーション下で強い、株価が上昇するセクターは?
スタグフレーションの場合でも、インフレ下と投資先は同様です。つまり、株式、債券、不動産、金(ゴールド)、銀、銅、プラチナなどです。
実際は、株式と債券は景気次第で国の政策に大きく左右されるため、堅実な運用を達成するには少々ボラティリティが高く、あまりおすすめできません。
債券なんかは不況などのリスクが高まった時期に真っ先に買うべき資産でしたが、近年は過去と異なる動きを見せ、多くのファンドが痛手を被りました。
日本ではファンドラップが債券の暴落に巻き込まれ大損していたり、アメリカでは地銀が債券投資の失敗を引き金に、破綻までしてしまいました。
→ 【金融庁も指摘】ファンドラップで大損してひどい結果に?結局儲かった?評判の野村證券の「野村ファンドラップ」を徹底評価!運用実績だけでなく手数料や口コミを含めてわかりやすく解説。
報告書は100ページ以上に及び、SVBの経営破綻の原因を大きく2つに分類した。1つは同行経営幹部のリスク管理の甘さだ。新型コロナウイルス禍による異例の金融緩和の中で、同行の規模は急速に拡大したが、流動性の確保と金利変動リスクによる財務健全性のバランスを見誤り、経営陣はリスク管理に失敗したと断じた。
もう1つはFRB内の監督管理体制の不備だ。SVBが規模を拡大して構造を複雑化させる中で、FRBは同行の脆弱(ぜいじゃく)性を十分に理解しておらず、脆弱性を認識した後でも、これらの問題を迅速に修正するための十分な措置を講じなかったとしている。また、FRB内の人員体制も不十分で、1人の審査官が2~3週間の間に投資ポートフォリオ、流動性、リスクマネジメントの審査を受け持つこともあったという。
残るは不動産、ゴールドなど現物資産になりますが、不動産は生半可に取り組むべきものではないですし、リートもタコ足配当ファンドが多過ぎます。
ゴールドも良いのですが、これもあまりにもボラティリティが高く、逃げるべき時は逃げなければならないという投資家としての資質が求められてしまいます。
投資とは本当に難しいのです。(しかし、運転免許なしでマニュアルスポーツカーを乗り回るかのようにトレーダーを気取っている人もたくさんいます)
あまりにもボラティリティが激し過ぎて目が回りそうです。
これはS&P500のインデックスファンドにも言えることです。
ではどうすればいいのか?富裕層はみんなトレードがうまいのか?と疑問が出てきます。
欧米富裕層、大型機関投資家のポートフォリオの中核にあるのは、ヘッジファンドなのですよね。
ハーバード大学やイェール大学基金はポートフォリオの実に30%近くをヘッジファンドで運用しています。
ヘッジファンドとは絶対収益型で、ファンドマネジャーの才覚を最大限発揮し、どんな相場環境でもリターンを狙っていくという形態のファンドです。
基本的には一流金融機関で経験を積んだ後に、さらに才能を活かすために独立してヘッジファンドを立ち上げます。
Asset Class | Allocation | Return |
Public Equity | 14% | 50% |
Private Equity | 34% | 77% |
Hedge Funds | 33% | 16% |
Real Estate | 5% | 13% |
Natural Resources | 1% | -1% |
Bonds/TIPS | 4% | 3% |
Other Real Assets | 1% | 1% |
Cash & Other* | 8% | – |
Endowment | 100% | 34% |
Source:米ハーバード大学
スタグフレーションに強い資産は何かというと、このヘッジファンドというオルタナティブ投資の一つということになります。
当然ですよね、プロが相場に合わせて試行錯誤して結果を出してくれるのですから、それに乗らない手はありません。
ただし、ヘッジファンドにも様々な戦略、哲学がありますので、真剣に選ぶ必要があります。筆者の場合は堅実に長い期間運用している実績と、しっかりと一流金融機関で経験を積んだファンドマネジャーが運用していることを大前提としています。
以下で日本のヘッジファンドについてはまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
スタグフレーションについての概要と、日本の取り巻く環境、そしてスタグフレーション下でポートフォリオに組み込みたい資産について解説してきました。
目まぐるしく世界が変わっていく中で、その変化についていかなければ資産は増えていきません。現状維持は後退です。しっかりと堅実な運用を行い、次世代に繋いでいきましょう。
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