2020年に大規模な金融緩和を米国をはじめ世界中で実施したことで空前絶後の株式投資ブームが発生しました。
その中でも最も勢いよく上昇したのがデジタル革命を促すハイテクグロース銘柄です。
このような状況の中で米国を中心としたハイテク銘柄に投資する投資信託が数多く組成されました。
その中の1つに今回紹介するゼロコンタクトがあります。
ゼロコンタクトは運用開始後半年は堅調に推移していました、その後停滞して昨年末から暴落となっています。
本日はアイコンタクトについて以下の観点からお伝えしていきたいと思います。
- どのような投資信託なのか?
- 構成銘柄はどうなっているのか?
- なぜ下落しているのか?
- 今後の見通しは引き続き暗いのか?
投資信託「ゼロコンタクト」はどのような投信なのか?
まず、ゼロコンタクトがどのような投資信託なのか見ていきましょう。
特徴①:非接触型サービスを提供する企業に投資
ゼロコンタクトは名前の通り、非接触型サービスを提供する企業に投資をする投信です。
正式な名称はデジタル・トランスフォーメーション株式ファンドですが以下の経緯で愛称をゼロコンタクトとしているそうです。
D X は「ITの 浸 透により、人々の生活をあらゆる面でより良く変革させる」として、2000年初頭に提唱され始めた概念です。 DXの中でも、人との接触を避ける、いわゆる非接触(ゼロ・コン タクト)ニーズ*が高まりつつあることなどから、「ゼロ・コンタクト」 を当ファンドの愛称としています。
参照:目論見書
非接触型サービスというと一番最初に思いつくのはオンライン会議を提供しているズームではないでしょうか。
他にもEコマースや動画配信企業など非接触型サービスはパンデミック後の世界で隆盛を極めました。
まさに2020年以降の生活に欠かせないスター銘柄に投資をするというコンセプトで組成されています。
特徴②:アーク社が運用指示
日興アセットマネジメント社が販売していますが、実際に運用の監修を行っているのはアーク社です。
アーク社は2020年最も投資界隈をざわつかせたキャシーウッドによって設立されました。
ARK Investment Management LLCは、フロリダ州セントピーターズバーグに拠点を置くアメリカの投資運用会社です。
複数のアクティブETFを運用しています。主なETFは以下ですが、一番有名なのはARKKですね。
ARKKが運用するETF
- ARKK
「破壊的イノベーション」を生み出す企業へ投資。 - ARKW
AI、クラウドサービス関連企業への投資。 - ARKF
ブロックチェーンやフィンテック関連企業への投資。 - ARKQ
ロボティクスや自動運転関連企業への投資。 - ARKG
ゲノムやバイオ関連企業への投資。
旗艦ファンドであるARKKはテスラやズームなど2020年のスター銘柄を引き当てて基準価格を急上昇させました。
以下はARKKの基準価額の推移です。
2020年に基準価額は昇竜拳を果たしましたが、その後大暴落して現在は2019年の水準に戻ってしまっています。
完全にブームと共に盛り上がり、泡沫の夢に消えたという感じですね。
2021年2月の時点で運用資産額は500億ドルだったものの2022年5月にはパフォーマンスが低下し運用資産は159億ドルまで低下しています。
投資信託「ゼロコンタクト」の組み入れ上位銘柄
ではゼロコンタクトの組み入れ上位銘柄について見ていきましょう。
銘柄 | 国 | 業種 | 構成比率 |
ZOOM | 米国 | ソフトウェア | 9.1% |
ROKU | 米国 | メディア・娯楽 | 7.5% |
COINBASE | 米国 | 各種金融 | 6.4% |
TWILIO | 米国 | ソフトウェア | 6.2% |
BLOCK | 米国 | ソフトウェア | 5.6% |
SHOPIFY | カナダ | ソフトウェア | 5.1% |
SEA | シンガポール | メディア・娯楽 | 4.2% |
Unity | 米国 | ソフトウェア | 4.1% |
UiPath | 米国 | ソフトウェア | 3.8% |
Draftkings | 米国 | 消費者サービス | 3.7% |
ZOOMは言わずもがなオンライン会議のツールですね。
ROKUは動画配信を行っている会社です。COINBASEはブロックチェーンの会社です。
他にもShopifyやSEAはEコマースの会社となっています。
2020年の米国市場を彩ったスター銘柄で構成されています。しかし、それは過去の栄光です。
以下は上位3銘柄の値動きです。右肩下がりですね。この理由については追ってお伝えします。
【ZOOM】
【ROKU】
【COIN】
ちなみにアーク社の旗艦ファンドのARKKの構成上位銘柄は以下となります。
構成順位は違いますが非常に似た構成となっていますね。
ゼロコンタクトの運用実績!基準価額の推移を確認
では肝心のゼロコンタクトの運用実績について見ていきましょう。
直近の下落が大きく設定来で大きなマイナス
1ヶ月 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 1年 | 3年 | 設定来 |
-11.23% | -28.76% | -55.34% | -57.87% | - | -44.97% |
全ての期間でマイナスですね。これはなかなか厳しい結果といえるでしょう。
ナスダック総合指数に劣後しARKKと同様のリターン
以下はゼロコンタクトとナスダック総合指数とARKKの比較です。
橙色:ゼロコンタクト
青色:ARKK
赤色:ナスダック
この期間大きく売り込まれているナスダックと比較すると大きく劣後していることがわかります。
殆ど、アーク社のARKKと同じ動きとなっていますね。
つまり、2020年に一世を風靡したハイテク銘柄全般的に売り込まれた結果ゼロコンタクトの基準価額も悲惨なことになっているということですね。
それでは、なぜハイバーグロース銘柄が暴落しているのかという点について次の項目で詳しく見ていきたいと思います。
ゼロコンタクトが暴落している理由とは?
ゼロコンタクトが暴落している理由はハイパーグロース銘柄全体が下落しているためだとお伝えしました。
ではなぜハイパーグロース銘柄は下落しているのでしょうか?
大きく分けて2つの理由があります。
2020年から2021年前半に過度な期待を織り込んでしまった
パンデミックを期にデジタル化が大きく進展しました。
結果としてデジタルを主軸としたハイテクグロース銘柄の株価が2000年のITバブルを彷彿とさせるレベルで吹き上がりました。
期待先行で上昇していったのでバリュエーションは高騰していき赤字銘柄でも非常に高い株価となりました。
時には売上の50倍以上の価格で取引されている銘柄もあり、売上の20倍であれば割安であるという状況でした。
完全に投資家の頭の中が沸き立ち冷静ではなかったかと思います。
社会変革もある程度収まり、成長率が落ち着くにつれて期待が白楽して投資家の熱も収まりました。
すると本来あるべき水準まで株価は落ち着きを取り戻していったのです。
投資家の頭を冷ますもう一つの要因が次項で説明するFRBの金融政策の変遷です。
米国の中央銀行は大規模緩和から急速な引き締めに路線を大幅に変更
米中央銀行のFRBはパンデミックから国民と経済をすくうために金利をゼロに引き下げ、バランスシートも拡張して大規模緩和を実施しました。
株価と金利はシーソーゲームの関係にあります。
金利が引き下げられれば無リスクで得られるリターンが減るため、リスクをとって株式に投資するインセンティブが高まり株式市場に資金が流れます。
そして、金利の低下はグロース銘柄に特に強い追い風を吹かせます。
企業価値の代表的な算出方法にディスカウントキャッシュフロー法があります。
ディスカウントキャッシュフロー法は将来生み出すキャッシュを現在の価値に割り引いて足し合わせて企業価値を算出する方法です。
グロース株は将来の利益が大きくなると見込まれます。そのため将来の利益を割り引く割引率によって企業価値が大きく異なってきます。
割引率が高くなれば現在の企業価値は低くなりますし、割引率が低くなれば現在の企業価値は高くなります。
そして、この割引率は様々な変数によって導き出されるのですが、その中に国債金利が含まれます。
米国の長期国債の金利が高くなれば割引率が高くなり現在の企業価値は低くなります。
一方、米国の長期国債の金利が低くなれば割引率が低くなり現在の企業価値は高くなります。
それでは米国の長期債の指標として使用される10年債の推移をご覧ください。
パンデミックを期に大きく下落しましたが、直近2019年の水準を超えて10年債金利は急騰しています。
この10年債金利の急騰がハイパーグロース株の企業価値を急落させて株価暴落の要因となっています。
今後の見通しとは?
重要なのは今後の見通しです。
ゼロコンタクトに組み入れられている銘柄の暴落の要因は以下の2つです。
- 過度な期待の剥落
- 米国の長期金利の急騰
この2点が今後晴れてくるのかという点が重要となります。
過度な期待の剥落は終わっているが成長軌道を描けるかは疑問
既にはイパーグロース株に対する過度な期待は剥落しています。
ただ、重要なのは今後の成長を投資家に対して描けるかという点が重要になってきます。
劇的に2020年から2021年に導入が進んだので売上や利益の成長率は急騰しました。
しかし、例えば代表銘柄のZOOMをご覧いただければわかる通り、成長率は著しく低下しています。
年度 | EPS | 成長率 |
2019 | 0.06 | - |
2020 | 0.35 | 483% |
2021 | 3.34 | 854% |
2022(予想) | 5.07 | 51% |
2023(予想) | 3.78 | ▲26% |
2024(予想) | 4.05 | 7% |
株価は未来の業績を見通して決定づけられます。今後EPSが下落するような銘柄はそもそもグロース株ですらありません。
ゼロコンタクトが組み入れている銘柄は新たな成長軌道を投資家に示すことができなければ、このまま下落しつづける確度が高いといえるでしょう。
インフレは収束する気配がなく金利は高止まりが想定される
米国の長期金利が上昇している理由は米国で強いインフレが発生したためです。
パンデミックを機に大規模な金融緩和で利下げとともに、バランスシートを拡大して市中にドルをばら撒きました。
更にサプライチェーンの混乱もあり米国では40年ぶりの8%台のインフレが発生しています。
中央銀行の使命はインフレ率を2%に収束させることです。
現在の8%の金利を抑え込むためには景気をさますためにFRBは利上げを実行していく必要があります。
利上げを実行していくということは金利が上昇していくということです。
今後インフレが明確に抑えられるまでは金利は高止まりを続けグロース株にとっては厳しい環境が続くと考えるのが自然です。
特定のセクターに集中する投資は長期投資という観点からは避けるのが賢明
今回のように特定のセクターに投資するのは環境が良い時は大きなリターンをもたらします。
しかし、逆に環境が悪化すると上昇気流は一転して逆流を開始します。
特定のセクターに投資をしているファンドへの投資は博打的な要素があることを念頭において投資を行いましょう
市場環境に影響をうけない投資先とは?
ゼロコンタクトのように特定セクターに投資をしていると博打的な要素が強くなります。
またS&P500指数のように指数に投資していても安全というわけではありません。頻繁に指数自体も暴落していきます。
では、市場環境に依拠しない投資を行うにはどのような選択肢があるのでしょうか?
筆者が推薦したいのはヘッジファンドという選択肢です。
ヘッジファンドはどのような市場局面でもリターンを狙う絶対収益型の投資ファンドです。
実際、最大規模のヘッジファンドとして有名なブリッジウォーターアソシエイツは以下の通り暴落を開始して右肩あがりの資産成長を実現しています。
ブリッジウォーターは1000億円からしか投資ができず、個人の門戸は実質的に閉ざしています。
しかし、日本にはブリッジウォーターの哲学を体現した以下の成績を残している素晴らしいファンドも存在しています。
- 運用開始以降過去10年間年間ベースでマイナスはなし
- 年率10%のリターンを安定して継続
以下で詳しく取り上げていますのでご覧いただければと思います!
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